M&A時代のマネジメント戦略

合併の人事リスクはいつ表面化するか クレイア・コンサルティング 執行役員マネージングディレクター 針生 俊成氏

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 日本でもM&A(合併・買収)が企業の主要な経営手法の一つとなってきた。だが、その成功率は必ずしも高いとは言えない。主な理由に挙げられるのが、組織マネジメント、中でも人事制度の設計、運営の難しさだ。従業員のモチベーションを維持しつつ、本来の目的である事業のシナジー効果やコスト低減をどう達成するか連載で考える。

 前回はM&Aの中でも特に合併(組織統合)における人事リスクと人事統合シナリオの考え方について解説した。今回は、実際の人事統合の進め方について、前回紹介した人事統合シナリオ「(4)統合後新組織の方向性に合わせて、新しい人事制度を構築する」を選択した場合を想定して解説する。

人事統合はグランドデザインが重要

 人事統合において「新しい人事諸制度を構築する」ことのメリットは大きく2つある。

(1)統合後新組織の方向性や戦略を踏まえた最適な人事諸制度を構築できる

(2)多様な人事リスクを人事諸制度全体のバランスの中で吸収・対応でき、リスク対策の自由度が大きい

 この2つのメリットを最大限に活かすためには、人事統合のグランドデザインをしっかりと検討することが重要である。人事統合のグランドデザインとは、下記の2点について十分に幅広い観点から検討し、全体の青写真を描くことである。

A.新たに構築する人事諸制度の全体像

B.現在の人事処遇を新しい人事諸制度に切り替えるステップとスケジュール

《グランドデザインA:新たに構築する人事諸制度の全体像》

 グランドデザインは、等級・評価・給与・賞与といった基幹人事制度だけでなく、人材フローの仕組み(採用・異動・退職)、退職金・年金や福利厚生、労務管理制度、教育体系などについても総合的に検討ことが重要である。

 特に、M&Aや合併の前後では、人材フローのあるべき姿が大きく変化する。例えば、

・合併によって減少するポスト(役職)を踏まえて、余剰になった役職者をどのように再配置・活用すべきか

・旧組織間のシナジー効果を実現するために、どのような人事交流・人材再配置を促進するべきか(人事交流・人材再配置の障害をどのように排除すべきか)

・旧組織間で異なる年齢構成や等級・階層比率のバランスをどのように変えていくべきか

・新組織の方針や業務の変化についていけない社員に、どのような時間軸と方法(再教育、社外転身など)で対応すべきか

など、統合効果を最大化するためには人材フローのあり方の変化を出発点として(これまでとは異なる人材フローを実現するという観点から)、人事諸制度のグランドデザインを検討していくケースが多い。

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