M&A時代のマネジメント戦略

「合併人事」に潜む4つのリスクとは クレイア・コンサルティング ディレクター 桐ヶ谷 優氏

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 M&A(合併・買収)による事業の再編が活発になっている。その背景には、1997年の独占禁止法改正による持ち株会社制解禁、2001年の商法改正による会社分割制度と労働契約承継法の導入、2007年の三角合併解禁などにより、経営の効率化や事業の拡大・再構築を目的とした事業再編を行いやすい環境が段階的に整備されてきたことがある。

旧社の組織・風土を温存

 日本でも主要な経営手法の一つとなりつつあるM&Aだが、その成功率は決して高いとは言えない。そもそもM&Aは、複数の企業同士のシナジーの最大化や、重複機能の削減等によるコストの効率化が主な目的だが、その成功の鍵を握る人材交流の促進や機能重複部分の人件費圧縮といった人事課題の解決がうまく進まないことも多い。

 統合後も、旧A社は第1事業部、旧B社は第2事業部、といった形で旧社の組織を温存した結果、シナジー効果を得られず、社員の一体感の醸成に長らく苦慮している統合事例も多い。

 人事マネジメントや人事諸制度の統合がうまくいかない最大の理由は、人事に関するリスクの複雑さにある。例えば、給与や退職金・年金といった処遇を統一するためには、不利益変更の「法的リスク」と「人件費増大リスク」がトレードオフとなる。

 また、日本企業には、統合前の会社の社風や基準、慣習などを重視し、温存する傾向があり、統合後に新しい風土が確立できないこともある。そもそもM&Aは多くの従業員にとって"不安要素"であり、不公平感や被害者感情などが発生しやすい。そのため、人事の統合作業には難しいかじ取りが必要となる。

 一般的に事業再編が行われると、自分が所属する会社が消滅したり、組織構造や組織の統治構造が大きく変化する。新卒で入社して定年退職まで勤め上げることが一般的であった日本の大企業社員にとって、事業再編は「一大事」だ。特に、事業再編によって生じる、等級・評価・報酬・就業規則・福利厚生・教育体系といった人事諸制度の変化は、社員のキャリア設計や生活設計、日々の働き方にも大きな変化をもたらすこととなる。

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