M&A時代のマネジメント戦略

合併人事、どちらの制度に合わせるのが得? クレイア・コンサルティング 執行役員マネージングディレクター 針生 俊成氏

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 日本でもM&A(合併・買収)が企業の主要な経営手法の一つとなってきた。だが、その成功率は必ずしも高いとは言えない。主な理由に挙げられるのが、組織マネジメント、中でも人事制度の設計、運営の難しさだ。従業員のモチベーションを維持しつつ、本来の目的である事業のシナジー効果やコスト低減をどう達成するか連載で考える。

リスクの完全排除は難しい

 M&Aを成功させるためには、4つの人事リスクに適切な対策を講じる必要がある。まず、4つの人事リスクについて改めて確認しておきたい。

《モチベーションリスク》

 M&Aに対して社員がネガティブな感情を抱くリスク。人心の掌握・統合が難しくなるだけでなく、優秀な人材の流出につながる可能性がある。具体的には、将来が不透明なことによる「不安感」、処遇格差などによる「不公平感」、処遇引き下げなどによる「被害者感情」、公平な評価の不在などによる「閉塞感」など。

《法的リスク》

 M&Aに伴って労働条件の変更が必要になった場合に、社員の既得権を侵害するような変更(不利益変更)によって社員から訴訟を起こされる可能性。

《人件費リスク》

 M&Aに伴う労働条件の変更過程で、モチベーションリスクや法的リスクを回避するための労働条件改善によって生じる人件費増大の可能性。または、M&A以前の労働条件を維持することで想定される将来の人件費上昇の可能性。

《運用リスク》

 旧企業間で管理職の能力や労務管理の慣習などが異なることにより、人事諸制度(評価・昇格・労務管理など)を変更・統合しても公正に運用されない可能性。

 これらのリスクはトレードオフの関係にあり、リスクを完全に排除することは難しい。M&Aの初期段階では、リスクが発生する可能性と、顕在化した場合の影響度を可能な限り事前把握し、リスクの回避または軽減の方策を検討しながら、人事に関する総合的な対応方針を定めることが必要である。

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