2020年の「勝ち組」自動車メーカー

トヨタの競争力に必要な「新設計プロセス」 ナカニシ自動車産業リサーチ 中西孝樹 氏

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 TNGAの導入にともない、部品の調達構造は大きな影響を受けると考えるべきだ。孤立しがちだったトヨタ標準のインターフェースはグローバル標準に変わる。これは、トヨタがグローバルサプライヤーから購買しやすくなるだけではなく、デンソーなどの基幹部品サプライヤーがグローバル自動車メーカーに拡販しやすくなるという好材料を認識したい。

 こういった共有化のスケールは、トヨタグループの枠を超え、グローバル規模に拡大できるわけである。トヨタ内の車両だけでなく、世界の自動車メーカーをまたぐ規模となっていけば、「規模の経済性」で攻勢を強める欧州陣営のメガ・サプライヤーへの対抗軸となっていく。これが軌道に乗れば、トヨタ系列の部品メーカーが真のグローバルサプライヤーに飛躍するチャンスにもなるだろう。

VWがつまずく理由

 最近のVWの経営評価は芳しくない。MQBの初期導入コストが予想以上に膨れ上がり、主力のVWブランドの収益がさえず減益基調に落ち込んでいる。VWブランドの営業利益率は2011年の4%から2014年には2.5%へと落ち込んで、「薄利多売」という悪口が聞こえる。VWグループの営業利益率は5.9%に留まり、10%の利益率を持つトヨタの後塵を拝する大きな原因となっている。

 MQBは、狙ったコスト削減の半分程度しか実現できていないといわれる。VWは、1台当たりプラットホームコストを最大20%削減、立ち上げへの一過性経費が最大20%削減、1台当たりのエンジニアリング時間が最大30%削減できると試算してきた。この計画未達が示すところは、将来のシナリオを先読みし、高い汎用性を持ったモジュールを魔法のように設計するということが容易ではないということだろう。

 VWの見通しはやや甘かった。設計効率は思うほど効率化できず、サプライヤーとの関係がうまく機能していない。内製部品のコストも期待したほど下がっていない。エンジニアとしての思想や概念は卓越しているが、ものづくりのところでつまずいているという印象がぬぐえないのだ。

 MQBはエンジニアリング、すなわち設計者の視点を重視した発想で生まれている。一方、TNGAは全体最適や標準化に対応しながらも、マニュファクチャリングの発想、つまり製造現場を重視している。トヨタは、製造技術の改革を先だって完成に近いところまで高めていることが特徴的だ。トヨタの工場はよりコンパクトでスリムに変わる。初期投資を40%抑えつつ更新投資が低い新生産体質を、新工場に留まらず、TNGAの導入に先だって既存工場へ導入していく。

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