2020年の「勝ち組」自動車メーカー

トヨタの競争力に必要な「新設計プロセス」 ナカニシ自動車産業リサーチ 中西孝樹 氏

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VWと追うトヨタの思想の違い

 個別最適を優先するクルマづくりが高い品質を生み出し、トヨタの高い評価につながってきたことはまぎれもない事実だ。ところが、今ではそういった品質や性能に圧倒的な格差はなくなりつつあることも事実であろう。むしろ、個別最適の弊害が目立ち始めている。

 量の拡大とともに、個々のニーズに対応する車種数が増大し過ぎた。細かく分類すれば今やトヨタのプラットホームは約100種類、エンジンの基本型式は16種類あり、バリエーションは約800種類にも及ぶという。これだけ細分化してしまうと、開発工程が膨大になり効率が悪く、部品が多様化し、複雑化、高コスト化は避けられない。

 もう1つのトヨタの弱点が、パワートレインを含めた車体骨格の重心が高かったことだ。これは車両の走行性能とデザインの制約になってきた。しかし、それが大きな制約とならないスポーツ・ユーティリティ・ビークル(SUV)や多目的車(MPV)が米国市場を中心に飛ぶように売れた時代が長く続いたことで、必要な変化への対応が遅れた面は否めない。TNGAは低重心でねじり剛性を高めた骨格に生まれ変わるといわれている。

 トヨタの設計改革への取り組みは、VWとはかなり違う印象である。トヨタはTNGAを以下のように説明する。(1)クルマを骨格から変える商品力の向上、(2)グルーピング開発による20~30%の開発効率化、(3)ものづくり改革、(4)世界標準部品の採用を可能とするグローバル標準への対応、(5)グローバルに車種・地域・時間をまたいだ「まとめ発注」によるコスト改善だ。

 TNGAには複合的な狙いがある。社長の豊田が言い続けてきた「もっといいクルマ」を実現する走りとデザインを追及すること。東日本震災があぶり出したジャスト・イン・タイムのリスクを分散させ、複雑化をコントロールするクルマづくり。これらを実現するためには、トヨタ標準が孤立し過ぎていたことを反省しなければならなかったと推察される。

 TNGAは、「トヨタウェイ」や「人づくり」というトヨタの根本を変化させるものではないだろう。閉鎖的過ぎたトヨタ標準を見直し、標準化/オープン化する部分と、固有/クローズドを維持する領域の仕分けを実施する。この過程で、部品発注をまとめてコストを引き下げ、外部のリソースをより効果的に活用する考えであろう。

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