2020年の「勝ち組」自動車メーカー

トヨタの競争力に必要な「新設計プロセス」 ナカニシ自動車産業リサーチ 中西孝樹 氏

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 わかりやすい例として、多くのモデルに装備される衝突回避用の自動ブレーキは、欧州のコンチネンタルやボッシュのシステムがどんどん採用されている。このような有力なシステム部品が、世界の自動車メーカーを超えて共有される規模の経済性はすさまじく大きい。標準化とオープン化を無視してしまうことは、量販メーカーとして孤独死を迎えるリスクがある。

全体最適化で先行するVWの「MQB 」

 欧州自動車戦略で推進されるモジュール設計は、将来の複数のモデルを全体最適化する発想である。その結果、モジュールの構成比が高まり、メガ・サプライヤーとの水平分業領域が進むという構造にある。この設計イノベーションの最先端を走るのがVWの「MQB」モジュール・アーキテクチャである。2013年から導入が開始されたMQBは、「ポロ」から「パサート」まで前輪駆動(FF)乗用車を組み上げる基本構造となり、2020年までに500万台以上のFF車両を、MQBをベースに設計・生産する構想が見えている。

 この概念では、2つの工程を理解する必要がある。まず、将来起こりうる技術革新や消費者ニーズを長期にわたって先読みし、複合的な変化やニーズを全体最適化できる機能を持った汎用性の高いモジュールを先だって設計する。後は、前もって設計されたMQBのモジュールを組み合わせながら、クルマを設計していくというものだ。すでに発売された「ゴルフ」「アウディA3」はMQBを採用しており、最近国内販売が始まった新型「パサート」も同様だ。

 この効果は大きく3つある。第1に、新モデルの開発工程数を最適化できること。第2に、構成される部品共通化率を引き上げ、より高いコスト競争力を実現し、その効果を先端の環境、安全機能に振り向け商品競争力を高めること。第3に、メガ・サプライヤーが開発したコストと機能競争力に優れたシステム製品の取り込みを容易とすることだ。

 VWグループは、M&Aを通してマルチブランド化を進めており、現在12個ものブランドで構成される。M&A、マルチブランド化、自動車設計の力を三位一体で推進するのがVWの基本戦略である。未来の長期ストーリーを描き、ここに部品サプライヤーを巻き込み、科学的なアプローチでその一大構想を実現させようとするのだ。

 1000万台の規模を超えるマルチブランドを展開させながらコストを管理し、魅力的な製品と技術を提供することは容易ではない。VWはエンジニアリングの力を結集し、この設計改革を競争力の源泉に置こうとしているのである。

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