2020年の「勝ち組」自動車メーカー

トヨタの競争力に必要な「新設計プロセス」 ナカニシ自動車産業リサーチ 中西孝樹 氏

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なぜ設計プロセスを変える必要があるのか

 クルマは約3万点にも及ぶ部品を組み上げてつくる製品だ。設計が非常に複雑で、コスト競争力は、この設計の段階でほぼ決定されると考えてよい。設計をするときに、膨大な構成部品に対して、「走る」「曲がる」「止まる」という基本機能を割り当てて、部品と部品のつながり(=インターフェース)を設計する概念を「アーキテクチャ」と呼ぶ。

 世界の大手メーカーがまさに今取り組む最大の課題は、コスト競争力を生み出すために、このアーキテクチャを再定義し、まったく新しい設計プロセスを構築することにある。トヨタの「TNGA」、日産自動車の「コモン・モジュール・ファミリー(CMF)」、欧州フォルクスワーゲン(VW)の「MQB」などがその代表例である。

 では、なぜ新しいアーキテクチャが必要なのか。そもそも3万点もの部品を個別に組み合せてクルマづくりを行うため、昔のT型フォード1車種だけならいざしらず、何車種も個別に設計することには無理がある。部品の組み合わせパターンが無限大になってしまうため、複数車種の開発を必要とする現代のモデル開発で、個別開発は不可能である。そこで、初めの段階から、組み合わせパターンを絞り込むことを目的に中間的なパレットを設け、組み合わせの複雑さを整理し、部品の変数の削減を狙う。

 このパレットに相当するものが、よく耳にする「プラットホーム」(車台)である。プラットホームは膨大な部品点数を整理し、まとまりをもってクルマを設計・製造し、コストを抑えながら高機能なクルマをつくり出す技術革新である。さらに、このプラットホームを共通化して、内外装やデザインの意匠を与え複数車両を派生させることを「プラットホーム戦略」と呼ぶ。

 1980年代以降、プラットホーム戦略をうまく活用できるメーカーが、大衆が望む耐久消費財のクルマの複雑化を制し、大量生産を可能とし、品質を維持させながらマルチチャネル化や国際展開の拡大などを進めて、世界の大手メーカーにのし上がっていったのである。

 ところが、今では世界中に生産拠点が分散し、先進国のみならず新興国も巻き込んだモデル開発に対応することが求められる。コンピュータで制御する電子部品システムも大幅に増加し、複雑さは一段と増してくる。プラットホームは同じでも、結局、その上に載せる部品変数がすっかり多様化してしまい、開発工程数は結果として大幅に増大し、プラットホームではまとまりがつかなくなってきたのだ。

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