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クルマの「自動運転」を巡り、熱い議論 ナカニシ自動車産業リサーチ 中西孝樹 氏

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環境技術より安全技術の変化は一段と速い

 クルマの要素技術は、非常に緩やかに変化を続けるものである。自動車産業は、国家の経済政策からエネルギー保障も含め、国の成り立ちを左右する基幹産業である。ヒトの本能である移動するという重要な価値の提供にも普遍性があり、モビリティ社会を秩序良く持続する意義は大きい。そのような構造が革命的に覆される変化は、多くの人が望まないのである。

 ところが、現在の自動車産業では、安全技術が究極に進化した自動運転技術がもたらす変化を巡って、熱い議論が巻き起こっている。自動運転技術の進化が、クルマの価値を根底から覆し、クルマ社会の構造を揺さぶりかねない可能性を秘めているからだ。情報通信技術(ICT)とクルマの融合が生み出す変化はすさまじいと予測されている。

 その結果による進化のレベルを現段階でいいきることは容易ではない。ただ、過去の穏やかに地道に進化する産業から、変革のスピードが著しく速い劇的な産業に変質していくことは間違いないと思われる。

 従来のクルマの安全技術は、クルマ社会の拡大で増大した交通事故や交通死傷者を削減し、運転者や乗員に快適で安全なモビリティを提供することが狙いであった。クルマの安全システムは、「予防安全」と「衝突安全」の2つに大別されてきた。

 予防安全とは、アンチロックブレーキシステム(ABS)のように、危険を回避して安全性を高めることだ。衝突安全とは、事故のときに乗員の安全を守る仕組みであり、衝突安全ボディー、シートベルト、エアバッグなどで生存空間を守って安全を確保することを意味する。

 近年はこういった基本的な安全システムに加えて、「運転支援」と呼ぶ新しい安全技術が急速に進化してきている。エレクトロニクスを駆使し、ミリ波レーダーや画像センサーなどの車載センサーによって走行環境を認識し、安全な走行を支援するシステムである。「衝突回避支援ブレーキ(AEB)」、前の車を自動追尾する「アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)」「車線逸脱警告(LDW)」「レーン・キーピング・アシスト(LKA)」などのシステムが、すでに市販車に搭載されている。

 AEBは、現在では多くのクルマに搭載が進んでいる緊急自動ブレーキであり、国内では富士重工の「アイサイト」が人気に火をつけた。ACCは高速道路を中心に運転操作を支援するシステムで、前方車両に合わせて車速を調節し、設定された車間距離を維持し追尾するものだ。LDWは運転者に車線逸脱を警告する。LKAはさらに進化し、車線に沿った電動パワーステアリングを自動で制御することで、ドライバーのステアリング操作を支援する。

 これらの機能は今後、加速度的な進化が予想される。支援する領域が拡大すれば、クルマが自動運転される領域が段階的に拡大し、最終的にドライバーを運転から解放する、いわゆる「完全自動運転」の時代を迎えることも可能となってくる。

 自動運転車が普及できるなら、クルマはまったく違う価値観を生み出し、クルマ社会と交通システム、クルマのビジネスモデルに、当然、革命的な変化を呼び起こす可能性を秘めている。米グーグルに代表されるIT産業が新たなライバルに浮上し、自動車メーカーが牛耳られる未来図も描けなくもない。

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