2020年の「勝ち組」自動車メーカー

日本の自動車産業の復活は本物か ナカニシ自動車産業リサーチ 中西孝樹 氏

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 誤解しないでほしいのは、国際的な合従連衡を進め、要素技術の補完や規模の経済性を獲得し、国際競争力を構築するという基本的な流れが変わっているわけではないことだ。むしろ、今後もその目的で国境を越えた事業提携は拡大するはずだ。こういった提携は穏やかな資本関係で構築することが可能である。また、国家戦略に重大な影響を及ぼさない二番手メーカーが、国際的な合併劇に飲み込まれていくことは変わらない。

 2008年のリーマンショックは1つの契機であった。この経済危機の中で、米国のゼネラル・モーターズ(GM)は経営破綻し、各国の主要自動車メーカーも経営危機に陥った。この危機に際し、国民の血税を投入してでも、各国政府は自国の自動車産業を防衛し、スクラップ・インセンティブという買い換え促進策に巨額の資金を投入したのだ。米国政府は自国の自動車産業を救うため深く関与し、再建を果たすまで手厚く保護を加えた。

 国家戦略を支えうる自国を代表する世界的な自動車メーカーを育成する、過去の欧州にあった大企業育成政策(ナショナル・チャンピオン政策)が自動車産業には再び台頭していると考えてよい。

 国家間競争の中で、ひときわ国際競争力を増大させたのが欧州の自動車メーカーである。欧州の自動車産業は、世界的なクルマの設計の標準化やオープン化、M&A(企業買収)を駆使し、世界の自動車産業の最先端を行くリーディング企業を生み出してきている。世界の自動車の環境・安全の規制をリードし、強力なメガ・サプライヤーを育成し、自動車産業のイノベーションを先導する役割を果たしてきた。この流れの中で、独のフォルクスワーゲン(VW)、フランスのルノーなど、2020年までに世界のトップを争う競争力を持つ企業を育成している。

 米国は、カリフォルニア州のZEV規制(販売台数の一定比率を、排出ガスを一切出さない電気自動車や燃料電池車にしなければならないと定める規制)、企業平均燃費(CAFE)規制による規制を強めている。自国で国際競争力の高い情報通信(IT)産業と自動車産業の融合を加速させ、自動運転などの新しい技術でイニシアティブを取ろうとしている。

トヨタ1社への過剰依存はリスク

 一方、日本は、官民が一体となった戦略構築に取り組むことに出遅れた。さらに、トヨタ自動車以外のメーカーに活力が不足しており、トヨタ1社に依存する傾向が強まった。日産自動車は、業務・資本提携先のルノーとの関係を一段と強化しており、日産の戦略は今後さらに欧州の自動車戦略へ迎合していかざるをえない。過去は強い存在感を示したホンダは、天災などの不運もあったが、ここにきて急速に競争力に陰りを見せている。規模もニッチも追及できない、ある意味中途半端な立ち位置に陥り始めている。

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