2020年の「勝ち組」自動車メーカー

日本の自動車産業の復活は本物か ナカニシ自動車産業リサーチ 中西孝樹 氏

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 六重苦の要素の中で、明確に何か改善したものがあるのだろうか。小幅な実効税率引き下げが実現し、TPP(環太平洋経済連携協定)交渉に妥協点が見え始めてはいても、円高是正以外に際立った条件改善があったとは思われない。技術力や開発力でも、欧米勢に対して日本車メーカーが大幅に国際競争力のギャップを縮小させたとも思われない。

 むしろ、クルマの情報通信技術(ICT)、車載インフォーテインメント(IVI、「インフォメーション(情報)」と「エンターテインメント(娯楽)」の機能を提供する車載器)、自動運転技術など、長期的に非常に重要な競争力と考えられる要素で出遅れている印象が強いのである。

国際競争力を生み出す活力の源

 国内経済は自動車産業が果たす役割が非常に大きくなっているため、日本の基幹産業としての自動車産業の復活は朗報といえる。電機産業が国際競争力を喪失し始めており、自動車産業が担う役割と責任はますます増大している。

 事実、自動車産業は広大な裾野産業と雇用を抱える。国内就業人口の9%弱の550万人を雇用し、日本の貿易黒字のおよそ半分を稼ぎ出しているのだ。日本の将来が、自動車産業にかかっていることは自明であろう。

 同時に、クルマはその技術と価値を大きく進化させるステージに差しかかっている。環境対応や安全規制、情報通信基盤との融合などクルマの高付加価値化は、従来の自動車産業のピラミッドに留まらず、様々な業界を横断し、社会インフラ形成も含めた幅広い新技術や産業への相乗効果を生み出すことが予想されている。これらがもたらすイノベーションは、半導体、情報通信、電子部品、電池、水素、炭素繊維、化学素材などの広範な産業の活性化につながると考えられる。自動車産業は、日本の産業構造が国際競争力を生み出す活力の源でもある。

 日本という国家は、資源に乏しく、エネルギー保障に構造的な脆弱性を抱える。資源を輸入し、加工貿易で外貨を獲得することは宿命といえる。構造問題である少子高齢化、過疎化に対する重要な対策としても、新たなモビリティや交通システムの進化へ自動車産業が果たす役割は非常に大きい。自動車産業が向かっていく方向性は日本の成り立ちに大きな影響を及ぼすのである。

自動車産業の戦いは国家間競争へ

 自動車産業の戦いは、企業間競争を超え、国家間競争の枠組みがより鮮明となっていることを認識したい。どの国家も、自国の雇用を支えて将来の国際競争力の源となる技術や工業を牽引する、自動車という基幹産業を放棄するわけにはいかないのである。

 したがって、2000年代初頭に自動車産業に蔓延した、やや行き過ぎた国境を越えた合従連衡への熱は冷めている。国家戦略を支える代表的な自動車会社同士が、国境を越えて資本提携に踏み込むことは従来以上に難しいのである。

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