2020年の「勝ち組」自動車メーカー

日本の自動車産業の復活は本物か ナカニシ自動車産業リサーチ 中西孝樹 氏

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 当時、筆者は米国の大手証券会社の株式調査部に勤務していたが、そこでは年に一度、世界中の機関投資家を来日させ、かなり大規模な「投資カンファレンス」を開催してきた。幾度も天災や品質問題に見舞われ、飛ぶ鳥を落とす勢いの韓国勢に攻め込まれた国内自動車メーカーに対し、海外機関投資家は先行きを懸念する声にあふれていたことを記憶する。

 そんな悲観論を打破するため、2012年のカンファレンスの中で、韓国の自動車アナリストと共同で「韓国と国内自動車産業の比較分析」という1コマを担当し、国内自動車産業の構造対応がどこまで国際競争力を挽回できるかという検討を実施した。古い資料の中には、こう結論が示されていた。

(1)国内自動車産業はパラダイムシフトに対応するための構造対応の最中にあるが、その構造改革の効果が顕在化し、新商品サイクルが本格化する2014年度以降に国際競争力の大幅な改善がもたらされる可能性が高い。その結果、収益性も改善できる公算が高い。

(2)収益性に優れる韓国車メーカーと日本車メーカーの格差の最大の要素は、会計的差異と為替水準を原因とするところが大きく、これらは時間の経過とともに収斂(しゅうれん)する見通しである。

(3)国内自動車産業の中期的かつ循環的な競争力挽回の確信度は高い。一方、世界の自動車産業の技術や価値の変化に対して、本当に長期的な真の競争力を挽回できるか否かは未知数。

日本車メーカーの競争力は回復していない

 財務的な収益性の改善は実現できたのだが、予測の中で期待したほど日本車メーカーの構造改革が実現できたかといえば、想定通りとは思われない。現在の収益の大幅な改善は、アベノミクスがもたらした円高是正の効果と米国経済の想定以上の好転というマクロ要因の貢献が大きかった印象だ。

 国内自動車産業の競争力の挽回が不十分であると考えられる証左は、世界最大市場の中国で決定的な出遅れを演じ、日本車の世界市場シェアの低迷が依然続いていることや、中核市場である北米事業で苦戦が続いていることに表れているだろう。

 韓国車メーカーの現在の業績停滞は、やや自滅気味なところもあるが、為替がウォン高に大きく振れたことで、コスト競争力を大幅に喪失している点も大きい。日本車メーカーの復活も韓国車メーカーの凋落も、ともに為替に左右された要因が大きいのである。

 国内の自動車産業が営業利益率で世界トップに躍り出たとはいっても、でき過ぎの追い風を受けた結果と厳しくとらえるべきだろう。一定の改善は果たせたが、現段階でも競争力が本質的に挽回できたと考えてはいけない。

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