2020年の「勝ち組」自動車メーカー

日本車メーカー「擦り合わせ型」の弱点が露呈 ナカニシ自動車産業リサーチ 中西孝樹 氏

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 燃費・安全性能などの競争力を確立することはある意味当たり前。日本車の製品競争力は表面的に向上を続けているが、かつて成長期にあったような世界ダントツの高品質はもはや不在であり、世界とのギャップはほとんど収斂している。高品質なバリュー・フォー・マネーの再確立を実現し、日本車の存在価値、独自性を顧客に伝え直すことは重要な一歩である。

 内燃機関性能の抜本的な引き上げは、日本車ブランドのバリュー・プロポジション(顧客に価値を伝えて高めること)となりうる1つの重要な戦略だ。世の自動車メーカーが電化と情報化にひた走る中で、その流れに迎合するだけではだめだ。内燃機関性能を世界でダントツに引き上げることで、日本車メーカーの強みであるハイブリッド技術の発展にも大きな相乗効果が期待できる。

 こういった日本の存在価値を確立した上で、日本車メーカーもオープン・イノベーションに積極的に取り組んでいくべきだ。例えば、先進国、新興国を問わず、コストを引き下げ、複雑化を管理できる革新的なアーキテクチャの構築、そして、それを活用したプラットホーム戦略の展開も必要だ。

 新興国の大膨張と先進国のエレクトロニクス化は、自動車産業を経験のない規模と複雑化に直面させる。これを上手に管理し、コストと性能のブレークスルーを満たせる新しいクルマの設計、調達、製造のイノベーションが問われている。

 現段階では、メガ・サプライヤーを見事に育成したドイツ勢の有利が否めないが、2025年を見通した戦略であれば十分に巻き返しが可能である。そもそも、すべてをメガ・サプライヤーが支配するクルマなど、コモディティに過ぎず魅力は乏しい。日本車メーカーは対抗しうる新しい価値を提案していくことを忘れてはならない。非効率な自前主義を見直す必要はあるが、独自性のある技術も必要である。柔軟性を高め、様々な強みを生かせる組織の風通しの改善を進める必要があるだろう。

 ブランドマネジメントやプレミアム戦略の重要性も一段と高まりそうである。自動車の機能と商品がコモディティ化する領域が増幅するということは、競争力を支配する要因が、品質・技術から価格やコストへシフトすることを意味する。従来以上にマーケティング、デザイン、ブランドの管理能力の構築が重要な役割を担う可能性がある。

 ものづくりだけで勝利を求めにいく時代ではもはやない。その強みの上に成り立った「どのような仕組みで、どこでどうやって儲けるか」といったビジネスモデルを戦略的に構築する必要があるのだ。

中西孝樹 著『成長力を採点! 2020年の「勝ち組」自動車メーカー』(日本経済新聞出版社、2015年)「第1章 2020年世界の自動車産業の未来図」から
中西 孝樹(なかにし たかき)
(株)ナカニシ自動車産業リサーチ代表。1994年以来、一貫して自動車業界の調査を担当し、日経金融新聞・日経ヴェリタス人気アナリストランキング自動車・自動車部品部門、米国Institutional Investor誌自動車部門ともに2004-2009年まで6年連続1位と不動の地位を保った。2011年にセルサイド(証券会社)復帰後、日経ヴェリタス人気アナリストランキング、Institutional Investor誌ともに自動車部門で2013年に第1位。1986年オレゴン大学卒。山一證券、メリルリンチ日本証券などを経て、2006年からJPモルガン証券東京支店株式調査部長、2009年からアライアンス・バーンスタインのグロース株式調査部長に就任。2011年にアジアパシフィックの自動車調査統括責任者としてメリルリンチ日本証券に復帰。2013年に独立し、ナカニシ自動車産業リサーチを設立。著書に『トヨタ対VW 2020年の覇者をめざす最強企業』、日経文庫業界研究シリーズ『自動車』などがある。

キーワード:経営層、経営、技術、ものづくり、グローバル化、イノベーション、国際情勢、M&A

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