2020年の「勝ち組」自動車メーカー

日本車メーカー「擦り合わせ型」の弱点が露呈 ナカニシ自動車産業リサーチ 中西孝樹 氏

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古い構造で勝ち過ぎることはリスク

 すなわち、自動車産業の競争力は、表に表れない戦略性、経営力、効率、生産性など深層に存在する要素の評価がより重要だ。これを東京大学大学院教授の藤本隆宏は「深層の競争力」と呼んでいる。しかし、その計測は容易ではない。

 財務パフォーマンスは競争力の帰結ではあるが、競争力が完全なものではなくとも、ある程度の財務成果を中期的にあげることは可能である。投資循環や為替変動のタイミングが、財務的競争力の好転を実力以上にもたらすことがあるためだ。

 ましてや、危機的な経営状況に陥り大幅なリストラクチャリングを進める中で外部環境が好転すれば、でき過ぎた結果を生み出してしまう。したがって、先端技術の開発や投資をこなしつつ、深層の競争力の引き上げを実現した上で、現在の収益力を維持できるか、というところに、日本の自動車メーカーの真価が問われている。

 自動車産業は、価値観や設計のアーキテクチャなどの構造的な変化は非常に穏やかに進む特性を持っている。情報や安全の技術革新を目前にしても、少なくとも5~10年の時間軸では革命的な変化は起こらない。そうであれば、古い構造を立て直すことで、しばらくは勝ち続けることが可能となる。しかし、その勝利は、その先の長期的な勝利を約束しているものではない。古い構造で勝ち過ぎれば、むしろ慢心をまねく。必要な構造対応を怠り、2000年代の米国メーカーのようなもろい繁栄となりうる。

求められる4つの改革

 クルマは誕生以来、アーキテクチャが根本から変わることはなかった。しかし、これからの進化速度は、従前の穏やかさとは性質が異なる新展開だと認識したい。世界販売台数1000万台は前人未到の領域に達したような感覚であったが、今や1000万台は新たなスタートラインと考えるべきである。この規模を前提に、膨張する商品やグローバル化したオペレーションを管理し、収益確保策を見出していかなければ、永続的な企業の繁栄はないだろう。

 日本車メーカーの深層の競争力を引き上げていくには、以下の4つの改革を進めていくことが重要なポイントになってくる。

1.商品力、ブランド力の再構築:日本車の根本的な成功要因である高品質なバリュー・フォー・マネーの再確立とそれを実現できる技術・商品の提供。
2.開発構造の変化:擦り合わせ型の個別最適から、オープン化・標準化も含めた全体最適への移行。エレクトロニクス化とIT化への対応。
3.調達構造の変化:量をまとめる調達戦略と欧州メガ・サプライヤーに対抗できる仕組みの構築。
4.グローバル化の確立:現地調達率の拡大という部品を軸とした展開に加え、マネジメント、人材育成といった経営そのものの現地化、現地での開発体制の構築。

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