中東の実相に迫る

アラブvs.イスラエルに割って入るイスラーム国 防衛大学校名誉教授 日本エネルギー経済研究所 客員研究員 立山 良司

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 中東の動揺が収まらない。残虐なテロを繰り返す過激派「イスラーム国」(IS)の勢力は一時より衰えたとはいえ、戦闘はなお続く。イランの核開発問題やイスラエルとパレスチナの争いも出口が見えない。一方、人口が増え、経済成長が期待されるこの地域は日本企業にとって有望な市場でもある。混沌とした中東の現状をどうとらえ、付き合っていけばよいか、連載で考えていく。

1世紀以上に及ぶ争い

 パレスチナ問題にほとんど関心を示さなかった「イスラーム国(IS)」がこのところ急に、イスラエルに矛先を向け始めた。6月末には「ユダヤ国家」イスラエルを根こそぎにするというビデオ声明を出した。7月初めにはシナイ半島を拠点とするIS系過激組織「シナイ州」がイスラエルに向けロケットを発射した。「シナイ州」と敵対しているエジプト軍をイスラエルが支援したという理由だった。

 アラブ・イスラエル紛争はイスラエルが独立した1948年から数えて、70年近く続いている。パレスチナの地をめぐるパレスチナのアラブ人(パレスチナ人)とユダヤ人との対立、つまり狭義のパレスチナ問題となると1世紀以上に及んでいる。「慢性的な紛争」と呼ばれる所以だ。

イスラエルとパレスチナ

 パレスチナ問題、あるいはアラブ・イスラエル紛争はもともと民族主義の対立だった。「民族主義の世紀」と呼ばれた19世紀後半、東欧やロシアにいたユダヤ教徒が「自分たちはユダヤ民族だ」という意識に目覚め、民族主義運動「シオニズム」に基づきパレスチナへ移民を始めた。

 しかし、彼らが目指した「約束の地」にはパレスチナ人が何世紀にもわたり住んでいた。それ以降、パレスチナという狭い地域をめぐり、ユダヤ人とパレスチナ人の2つの民族が対立を続けている。

 アラブ諸国もまたパレスチナ人を後押しし、隣接するエジプトやシリア、ヨルダンはイスラエルと戦争を繰り返した。アラブ民族主義が高揚した1960年代ごろまで、アラブ諸国の指導者たちは自国民やアラブ世界からの支持を得るために、「アラブの大義」を掲げて「アラブの同胞」であるパレスチナ人の戦いを支援する必要があったからだ。

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