オムニチャネル戦略

独自の手法で成果あげるキタムラ、良品計画 イー・ロジット代表取締役社長兼チーフコンサルタント 角井 亮一氏

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「来店しない357日」にアプローチ

 また、このアプリのリリース以降、従来は見えていなかったMUJIファンの行動が細かくわかるようになりました。熱心なファン層でも、ネットと実店舗を合わせて年間に8日程度しか「MUJI」での購入がなかったのです。そこで同社が考えたのが、専用アプリを使って、購入日ではない357日であっても無印ファンとの接触頻度を高めることです。店舗と共通のマイルプログラムを使って、商品を購入しなくてもマイルを獲得できる機能を追加していきました。

 たとえば、商品情報を検索したときに「ほしい!」「もってる」のボタンを押すとポイントがもらえます。商品レビューへの投稿や、店舗のそばを通りかかったときの「チェックイン」(店舗が半径600メートルに近づくと、プッシュ通知でスマホ画面上で教えてくれます)でも同様です。

 その他アプリの機能には、ほぼリアルタイムの在庫検索、バーコードスキャン(店頭の商品の詳しい情報が得られる)、ユーザー一人ひとりにカスタマイズしたキャンペーン情報(店頭POP表示がなくても、スマートフォンから特典価格を確認できる)などがあります。

 アプリのリリースから2年以上を経て、全社売上に対する貢献度もおぼろげながら見えてきました。国内売上高の約3割をアプリユーザーが占めています。客単価は非アプリユーザーの約2倍(4000円程度)あります。

 また、同社ファンのようにブランドロイヤルティの高い層に手厚いクーポンを発行しても、それに見合うだけの売上増は見込めません。その代わり、キャンペーンのプッシュ通知に対しては50万~60万人が即座に反応してくれます。通常1回のキャンペーンのお知らせは、約120万人(ムジネットメンバーでメールの受信を許可している人)にしか流さないそうですから、この「パスポート」は、メルマガ広告でいうところの開封率50%以上のメディア(媒体)ということになります。

 PCが情報検索の主流の時代は、検索結果のトップ画面に表示されることが関心の中心でしたが、スマートフォンの時代になり、別の視点が必要になっています。有料、無料を含めて数多くのスマートフォンアプリが流通しているなかで、同社では「どうやってスマートフォンの待ち受け画面の一角に残り続けるか」ということに腐心しているそうです。

 その対応策としての期待を含めて新機能として追加したのが「ニュース」です。SNS(交流サイト)上と同じように、MUJIに関するあらゆる情報が社内、各店、協力機関から発信されます。

 MUJI好きな人間がつながれる環境を提供するのが「パスポート」です。ブランド力のある同社だからこそ描ける、ネットとリアルをつなぐ戦略ツールなのかもしれません。

角井 亮一著 『オムニチャネル戦略』(日本経済新聞出版社、2015年)第5章「日本のオムニチャネルの行方」から
角井 亮一(かくい りょういち)
株式会社イー・ロジット代表取締役社長兼チーフコンサルタント。

1968年生まれ。上智大学経済学部を3年で単位終了。米ゴールデンゲート大学でMBA取得。船井総合研究所、光輝物流などを経て現職。イー・ロジットは、現在190社以上から通販物流を受託する国内ナンバーワンの通販専門物流代行会社であり、170社の会員企業を中心とした物流人材教育研修や物流コンサルティングを行う会社。

『小売・流通業が知らなきゃいけない物流の知識』(商業界)、『物流がわかる』(日経文庫)ほか著作多数。

キーワード:管理職、プレーヤー、マーケティング、営業、経営、人材、IoT、AI

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