インダストリー4.0の全貌と日本企業の取るべき道

欧州、産業競争力「復権」へ壮大な挑戦 ローランド・ベルガー日本共同代表 シニア パートナー 長島 聡氏

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 全5回にわたって、インダストリー4.0の全貌と日本企業の取るべき道について解説します。1回目はインダストリー4.0誕生の背景と改革の内容です。次回以降、独シーメンスやボッシュなどの先進企業の取り組み、デジタル化の持つ潜在力、そして日本企業のあるべきデジタル化を取り上げます。その出発点として今回は長期視点での産官学の壮大な取り組み、インダストリー4.0の本質に迫ってみたいと思います。

新興国や日米の攻勢が背景に

 21世紀に入ると、日米と同様に欧州でも産業の空洞化が叫ばれてきました。新興国の安い労務費をてこにした低価格攻勢、性能・スペックの急速なキャッチアップによって、先進国の製造業は徐々に劣勢を強いられてきたのです。また、就労人口の減少や高齢化、熟練技術者の技術継承も大きな課題でした。

 そうした中、北米ではシェール革命、そしてIT(情報技術)によるイノベーションによって、製造業が息を吹き返しました。日本でも円高という逆風の中、地道な現場改善の積み重ねで生産性を高め、産業の空洞化に立ち向かってきたのです。

 一方、ドイツでは2000年代後半から産官学が集った国家情報化戦略が始まりました。メルケル首相が旗を振り、機械、電気電子、情報通信の3工業会を束ね、業界横断的な製造業の革新に取り組みました。IoT(モノのインターネット)を製造プロセスへ応用して、その上流から下流までをネットワーク化しようという考え方です。

 こうした取り組みがインダストリー4.0と呼ばれるようになったのは、弊社ローランド・ベルガーを含む調査機関がドイツ政府や業界団体向けの報告書にまとめたことがきっかけです。その後、2011年にドイツ工学アカデミーが中心となって、10~20年後に実現すべき製造プロセスのスマート化を提唱し、インダストリー4.0実現に向けた勧告、8つの優先分野が定められました(図1)。

 そして、インダストリー4.0は2011年の独見本市ハノーバーメッセで華々しく世の中に公開されたのです。現在では、各優先分野には研究開発のロードマップが作成され、政府の資金援助の下、数百の大学や企業が技術開発や規格作りに邁進しています。

 インダストリー4.0は、IoTを核に「つながる」「代替する」「創造する」という3つのコンセプトで製造業の復権を狙っています。工場を中心に材料調達から設計、生産、物流、サービスまで一連の企業のサプライチェーン全体をつないで、ロボット、3Dプリンター、自動搬送車などで煩雑な業務を代替し、人は製品やサービスに付加価値を与える仕事に特化できるようになります。

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