近年、渋沢栄一への関心がますます高まっています。およそ500の会社の設立に関与し、「日本の資本主義の父」と言われる明治・大正時代の実業家に、今の時代の日本人だけではなく、海外の人々まで関心を寄せるのは、栄一の生き方や考え方に、懐かしい響きを感じるからではないでしょうか。
現在、日本は新しい時代を拓くことが不可欠です。ただ、日本が新しい時代を拓くことは、今回が初めてではありません。だから、渋沢栄一の言葉は、過去のものだけではなく、これから新しい時代を拓く日本人には参考になるはずです。
成功や失敗は身に残るカス
または失敗とかを標準とするのが
根本的誤りではあるまいか。
成敗は身に残る糟粕(そうはく)。
【「論語と算盤」・成敗と運命】
現代の言葉で言うと......
基本的に間違っているのではないか。
成敗とは人生の残り物に過ぎない。
日々の努力があるからこそ運命が拓ける
多くの人々は、成功や失敗ということだけを眼中に置いています。それは、自分の実質を見落としているからで、自分の命のカスに等しい金銭的財産を成果としているからです。
そもそも人を見るときに、あの人は成功したとか、または失敗したということを標準とするのが根本的な誤りではないでしょうか。
自ら運命をつくるとよく聞きますが、運命のみが人生を支配するのではありません。自分の知恵を使って努力するからこそ、はじめて運命を開拓することができるのです。知恵が乏しく、いざというタイミングのときに機会を逃したら、成功は遠のいてしまいます。
ときには善人が悪人に負けているように見えます。しかし、長い間の善悪の差は確然とつくものであり、自分の知恵を蓄え、誠実に努力すれば必ずその人は運命を開拓できるのです。
目先の結果に目を奪われて、焦る必要はありません。