これからの人生を切り拓き、苦境を乗り越えるために、渋沢栄一はどのようなヒントを遺してくれたのでしょうか。良い社会のための経営や国家と世界平和づくりの心得を定めるために、栄一の言葉を紹介します。
ひとつの正しい答えを求める画一的な時代は終わりました。多様な価値観が混在する時代では、複数の正しい答えがあって当たり前です。むしろ、これからの新しい時代を拓くために必要とされることは、先人の英知を用い、正しく問いかける姿勢ではないでしょうか。
偉人より必要な「完璧な人」
完(まった)き人なら
いくらでも必要な世の中である。
【「論語と算盤」・常識と習慣】
現代の言葉で言うと......
一方、世の中では完全で欠けたところがない「完全人間」は、
いくらでも必要だ。
智情意のバランスがとれ発達した常識ある完璧な人が必要
偉い人と完璧な人は違います。
偉い人とは、性格の一部に欠落があったとしても、その欠落を十分にカバーできる、他に優れた点がある。つまり、大きく「とんがった」人が偉い人です。
一方、完璧な人は、足りないところがない人です。智情意の一つひとつが優れている必要はありませんが、この3つの要素のバランスがとれ、かつ、発達しているのが常識ある人、つまり、完璧な人になるのです。
私たちの社会では、もちろん、ヒーローやリーダーのような偉い人が必要です。ただ、社会の多数の人に希望すべきことは偉い人になることではなく、完璧な人になることではないでしょうか。
実は、ヒーローやリーダーの用途は無限とは言えません。ただ、智情意がバランスしている完璧人間はいくらでも必要になります。
全員が偉い人だったら、社会は麻痺してしまうでしょう。一方、全員が常識を持った完璧人間であったら、偉い人は必要ありません。