知的生産経営

「巧い、速い」を磨き、大企業にない価値を インダストリー4.0 中小企業の飛躍に向けて ローランド・ベルガー代表取締役社長 工学博士 長島 聡氏

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 一方、技術者に対しては、この設備をカスタマイズして持っている、こんな試験設備でこんな数値の結果をたたき出した、図面の一部を見せてこんな難易度の高い加工をしたなど、具体的なスキルレベルと共に、自らの持つ要素技術を伝える工夫をしなくてはなりません。もちろん、守秘への配慮は不可欠ですが、できることは色々あるはずです。

 加えて、世の中に発信する機会を能動的に探索することも重要です。メッセや展示会への出展や講演活動はもちろんですが、「世界一」などメディアが取り上げやすい話題作りにも挑戦します。インパクトのある動画などがあれば、SNS(交流サイト)などで瞬く間に世界中へと広められる可能性もあります。

 また、大企業、業界団体、国が主催する経営や技術を題材にしたコンテストで継続的に賞を獲得していくことも有効です。もちろん、単独で取り組むにはハードルが高いことも多いとは思いますが、その場合には志を共にする同志と取り組んではどうでしょうか。結果が残せると、だんぜん従業員のモチベーションが高まってくるはずです。

 世の中への発信を継続的に実践している中小企業があります。由紀精密(神奈川県茅ヶ崎市)です。従業員数は数十名の金属切削加工の会社ですが、その成果には目を見張るものがあります。2009年には森精機の「切削加工ドリームコンテスト」にて金賞を受賞、2011年はパリ航空ショーへの単独出展を実現しました。2012年には経済産業省主催の「中小企業IT経営力大賞 優秀賞」を受賞し、2013年には「がんばる中小企業・小規模事業者300社」に選定され、昨年は経済産業省「攻めのIT経営」中小企業百選に選ばれています。

 さらに、昨年9月には微細加工機のリーディングカンパニーを目指す碌々産業(東京・港)と共同で、新ブランド「VISAI」とデスクトップ型超小型高精度CNC工作機械を発表しました。また、日本を代表する独立時計師である浅岡肇氏と、工具メーカーのOSGとの共同プロジェクトでは、機械式時計の中でも超複雑機構と呼ばれる「トゥールビヨン」を搭載した時計をオリジナル設計で完成させました。由紀精密はこうした活動を通じて、様々な企業から自然と色々な相談が舞い込んでくる状況を実現したのです。

常にステップアップする

 当たり前ですが、No.1の要素技術も時間と共に次第にNo.1でなくなります。強みは常に鍛え続ける必要があります。ただし、速さや巧さをさらに高めるために、単純にデジタル技術に頼るのは得策ではありません。まずはしっかりと足腰を鍛えながら、アナログで自社の各部門の活動に手触りを持つことが重要です。

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