知的生産経営

そのペーパーレス、本当に正解? 脳科学で解き明かす「紙とデジタルの知的生産性」

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 全体としてはタブレットより紙の資料の方が良い成績となることは前述したとおりだが、人によって画像メモの力や使い方に差がある。

 そのため、「タブレットを使った方が良い成績の人は、画像メモの力が強いタイプの人たちだと推測されます。この力が弱い人は、タブレットでは成績が悪くなってしまいます。紙の場合は、この画像メモの力が成績に影響しないわけです」。

 リズム・画像処理に関係する部位(右側頭葉・下頭頂葉)の活動とテスト成績の関係でも紙とタブレットで差が見られ、紙の場合はこの部位の活動が強いと特に成績が低下しやすかった(右図参照)。「リズムや画像に気をとられていると、プレゼンの内容を覚えられないということです。紙を資料として使う場合、特にこの傾向が強くなるわけで、実験の結果をまとめると、『画像的な理解』が得意な人は紙でもタブレットでも差はないが、『言語的な理解』が得意な人は紙の資料の方がいいらしい」と篠原氏は結論を述べた。

若い人ほど画像処理能力が高い?

 この実験で興味深いのは、人によって画像メモの力や使い方に差があり、「映像的に記憶に残すタイプの人はデジタルデバイスでもよく、そうでない人は紙が向いている」という点だ。現時点では映像的に記憶に残すタイプの人は少数なのだが、将来もずっとそのままかといえば、そうとも言えない兆しがあると篠原氏は指摘する。

 「現段階で私たちが実施した調査では、仕事のパフォーマンスという観点において紙よりデジタルデバイスの方が優れているという結果は出ませんでした。おおむね紙の方が良い成績を出しています。それはデジタルネイティブといわれる20代前半でも、現時点ではまだ紙の方が優位だといえます。ただし、年齢が低くなるほど紙の優位性が小さくなると思わせるデータが出てきています。まだはっきりしたことは言えませんが、より進化したデジタルネイティブが出てきたら、紙とタブレットの優位性が逆転する可能性があるかもしれません」。

 脳は、日常生活や職業的な特性の影響を受けて、特定の部位が強化・訓練される。そうすると脳の働き方も変わってくる、と篠原氏は指摘する。「書籍のように文字を主体としたコンテンツは脳の言語的な能力を鍛えることにつながります。しかし、今のデジタルコンテンツはビジュアルを多用したものが多く、ぱっと見たわかりやすさはありますが、斜め読みすらしないで情報を取り込むことが多くなってきているのではないでしょうか。そのようなコンテンツを日常的にたくさん見ている若い人たちは、画像的な情報処理能力が鍛えられていきます。視空間スケッチパッドと音韻ループは代表的な脳のメモと考えられていますが、その構成比が変わってくる可能性があります」。

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