東南アジアビジネス新潮流

統合ASEAN 広がるビジネスチャンス 日本貿易振興機構(JETRO) 海外調査部アジア大洋州課長 池部 亮氏

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 日本企業の非製造業投資は、金融、保険、不動産、通信業などの大型投資を除けば、数万ドルから数十万ドルの小規模投資が数多く存在する。資本や設備保有が製造業と比べ小規模となる飲食店や小売店などの店舗であれば、市場統合によるマクロ経済指標の改善よりも、町、地区、街路といった狭い商圏での変化がむしろ成否を左右する。単位エリア内の住民数、日中の人の動線、駅やバス停からの距離、そのエリアの人々の生活様式など、既存統計では計り知れない要素が重要となる。

小回りきく中小企業に有利

 人々の嗜好を理解しなければ成功が難しいのであれば、一から生産設備や販売チャネルなどを構築していくグリーンフィールド投資は難しいであろう。その国や地域の文化や宗教、生活様式などを確認し、受け入れられるサービスやモノを提供するビジネスをタイムリーに展開することが求められるからだ。

 この点、既に別の業態で進出した企業が数年間の現地経験を通じて新たな業態をその地域で起業するといった手法が中小企業にとっては有効に思える。最初は製造業で進出し、その後、飲食店や小売店を起業するといった二段階の進出である。グリーンフィールド投資だった初回に比べ、投資先の市場に需要が存在するかを十分な時間と経験から判断して供給を開始できるメリットがある。

 また、供給が新たな需要を生み出すことも起こり得るが、これも現地での生活体験で培った「勘」によるところが大きい。こうして考えると、小回りのきく中小企業の方が、機転を利かせたスピーディな展開が可能な分だけ大企業よりも有利であろう。

 ASEANを日本企業の生産基地ではなく販売市場として見るとき、数値的なデータで判明する現地事情よりも、実体験を通じた生活感覚と商習慣の習熟が必要である。その上で、どのようなビジネスが可能なのか、経営者自身の勘による着想が重要となる。

 中小規模のサービス業が海外展開する際、机上のデータ収集だけではほとんど何の役にも立たないだろう。現地でビジネスの芽を探す、あるいは自ら種をまき、萌芽させるのであれば、有り体な表現だが「百聞は一見にしかず」である。経営者自身が現地を体験して肌感覚で相性を確認するところから始まるのかもしれない。

池部 亮(いけべ・りょう)
日本貿易振興機構(JETRO) 海外調査部アジア大洋州課長

1992年日本貿易振興会(現:日本貿易振興機構)入会。研修制度でハノイ総合大学留学(1994~1996年)、JETROハノイ事務所(1998~2002年)、JETRO広州副所長(2006~2012年)、福井県立大学地域経済研究所准教授(2012~2014年)、2014年8月より現職。博士(経済学)。
主な著書に『東アジアの国際分業と「華越経済圏」』(新評論)、『行け ベトナム街道』(ジェトロ)、『メコン地域 国境経済をみる』(共著、アジア経済研究所)などがある。

キーワード:国際情勢、経営、グローバル化、マーケティング、経営、企画、経営層、環境問題

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