東南アジアビジネス新潮流

統合ASEAN 広がるビジネスチャンス 日本貿易振興機構(JETRO) 海外調査部アジア大洋州課長 池部 亮氏

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 ASEANは2015年末に安全保障や社会・文化、経済の3本柱からなるASEAN共同体(AC)を発足させ、なかでも経済共同体(AEC)が企業経営の視点から関心を集めている。域内への市場開放を促進し、人、モノ、カネの円滑な移動を促進することがうたわれている。

市場統合で得られるメリット

ASEAN共同体発足署名式に臨んだASEAN首脳(2015年11月22日、クアラルンプール)

ASEAN共同体発足署名式に臨んだASEAN首脳(2015年11月22日、クアラルンプール)

 では、AECによる経済的メリットはどのようなものか。一般的には関税撤廃による部品材料等の仕入れ価格の低下、市場拡大による販売増、サービス業の参入規制の緩和、制度や規制の統一的運用による取引コストの削減などが考えられる。ASEANは日本、中国、韓国、台湾を含めた東アジア大のグローバル・バリュー・チェーン(GVC)の一員である。地域集合体としてのASEANが引き続きこのGVCで競争力を維持、向上させるためには、ASEAN域内の市場統合を加速させる必要があろう。

 特に、東アジア各国に複数拠点を擁する大企業は、ASEANの市場統合によって様々なメリットが得られる。内需向け製造業であれば、分散した経営資源を最適地に集約でき、規模の経済性を高めることができる。また、サービス業であれば、サービス提供の拠点を同一の規制・基準の下、複数国に展開することが可能になる。このように、大企業であれば市場統合による事業の効率化や収益の拡大が期待できる。

 中小企業にとってはどうか。日本企業の海外進出は先の現地法人の統計を見ると、製造業で57%、卸売業では58%が中小企業(※)によるものであった。ASEANの一国に小規模な拠点を有するだけの中小企業も多いが、こうした企業にとって市場統合はどんなメリットをもたらすのだろうか。製造業であれば、技術的な優位性を持ち、長大なGVCの一部に組み込まれている場合、所属するGVCの競争力が高まることによって恩恵が得られるだろう。しかしながら、小売や卸売、飲食などの中小規模のサービス産業にとって、市場統合のメリットといわれても壮大過ぎていまひとつピンと来ないのである。

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