東南アジアビジネス新潮流

統合ASEAN 広がるビジネスチャンス 日本貿易振興機構(JETRO) 海外調査部アジア大洋州課長 池部 亮氏

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 一方で経済格差はASEANの多様性を示している。製造業では労働集約的な生産方式が適するのは低賃金国であるため、賃金が上昇した国から生産拠点の移転や分散が起こりやすい。低賃金国は工業化を進める上で必要な生産工場を手に入れ、雇用が創出され、物流やホテル、原料生産といった新しい需要も喚起される。

経済格差が生む多様な商機

 また、賃金が上昇した国は経済構造の高度化を進めることになるので、伝統産業から新規産業へと付加価値生産の源泉を継起させる。この高度化の過程にも商機が存在する。例えば、生産効率を高めるための自動化や在庫圧縮のための適時輸送システム、人々の生活水準向上に伴う流通や交通インフラの整備といったものとなろう。

 また、既述のとおり後発発展途上国の購買力は見た目以上に大きく、かつ都市部の消費は国の平均値の3倍から5倍といった高水準に達することも珍しくない。投資先として有望なフィールドが広がっているにも関わらず、高度なサービス産業が育っていない場合、こうした分野も日本企業にとって参入チャンスとなろう。

 例えば、コールド・チェーン(低温流通体系)による高度な物流・流通業や医療サービス、教育機関などもそうだろう。また、急速に普及率を高めるスマートフォンも商機を生み出す。後発発展途上国では、自宅固定電話、携帯電話、自宅へのインターネット普及といったプロセスを経ずに、一足飛びで個人のスマホが普及した。スマホを基盤としたサービス業の構築は、交渉にかかるコスト(通信費用と交渉時間)を大幅に低減し、サービス利用者と事業者との間の取引コストを限りなくゼロに近づける。

 カエル飛びの発展パターンによるネット社会の到来は、初期投資を抑えた新規ビジネスの機会を無数に提供するはずである。例えば、ネット通販と簡易登録制のタクシー運行サービスを組み合わせれば、人とモノの小口輸配送システムが全国規模で完成する。先進国よりも物流インフラが未整備な発展途上国にこそ、こうした商機が豊富に存在している。

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