2014年の日本のASEANへの投資は金融・保険(28.1%)、卸売・小売業(8.1%)、通信業(7.8%)などサービス産業が全体の55%を占めた。金融・保険、通信、大型ショッピングセンター建設といった投資は、サービス産業の中でも投資額が大きい。このため、シンガポール、マレーシア、タイなど、法制度が整備された国や潜在市場の大きい人口豊富国、あるいは地域統括拠点として有利な国へ、大企業が中心の投資が行なわれている。
購買力でみると格差は縮小
下のグラフはASEANの経済規模を示している。経済規模は一般的に人口と国内総生産(GDP)によって示されるが、ここでは1人当たり購買力平価(PPP)も掲載した。購買力平価とは、通貨単位当たりの「使い出」を国際比較し、その国の購買力の多寡を見る指標であり、グラフではドルベースでの購買力平価を示している。
ASEAN諸国の経済規模比較
注:数値はすべて2015年の推計値。
出所:国際通貨基金(IMF)"World Economic Outlook,Oct.2015"より筆者作成。
グラフが示すように、ASEAN域内は人口規模で610倍、GDP規模で75倍、1人当たりGDPで47倍の格差が存在する。しかし、国民1人当たりの購買力の差は24倍に縮まるのである。換言すれば、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナムは経済規模の指標からは貧しい国に見える。しかしながら、国民一人ひとりの消費する力はGDPと人口などの「見た目」より3倍から4倍大きいのである。
ASEANは今後も毎年5%を超える平均成長率を持続するとすれば、こうした購買力はますます上昇していくだろう。実際、国際通貨基金(IMF)の推計によれば、ASEANの購買力平価ベースのGDPが世界に占める比率は2015年の6.0%から2020年には6.6%に拡大するとされる。
なお、2000年時点のASEANの経済格差は、人口で635倍、GDPで114倍、1人当たりGDPは107倍、購買力平価は62倍であった。2000年に比べ経済規模の格差は大幅に縮小したのである。つまり、ASEANは後発発展途上国の成長とキャッチアップに配慮しつつ、高い成長の獲得に成功した地域だといえる。