粉飾決算――問われる監査と内部統制

東芝事件が浮き彫りにした監査の不可思議 青山学院大学大学院会計プロフェッション研究科特任教授 浜田康氏

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 東芝の不正会計事件は企業会計に関するさまざまな問題を浮き彫りにした。経営トップを含む会社ぐるみの不正がなぜ行われたか、長年にわたる巨額の粉飾決算を監査法人がなぜ見抜けなかったのか、不正に関与した経営者や社員の法的責任はどうあるべきかなど、検証すべき点は多い。

不正リスク対応基準はどうなったのか

記者会見する東芝の田中社長(当時、右)と室町会長(同、左)(2015年7月21日)

記者会見する東芝の田中社長(当時、右)と室町会長(同、左)(2015年7月21日)

 2015年4月3日、東芝は、一部のインフラ工事案件で会計処理に疑義が認められたとして、社内に特別調査委員会を設置、調査を進めると発表しました。上場会社で会計処理に疑義が認められたということ自体、問題ではあるのですが、誤りを含んだまま財務報告をするよりは事前に襟を正すほうが筋です。決算の適正性に厳しい目が向けられている昨今、天下の東芝もそのような対応を選んだのだろうという見方も、当初はありました。

 しかし、5月8日、今度は、過年度決算にも不適切な処理がある、決算が締められない、ついては、第三者委員会を設置して調査を続行する、という発表がなされました。

 これは大変な驚きでしたが、さらに混乱を来したのは、その金額でした。東芝は、5月13日、営業損益ベースで500億円程度という多額な修正が必要になる可能性があると発表しました。ところが、その後、粉飾額は膨らみ続け、結局、9月7日公表の訂正報告書においては2000億円を超える規模になりました。この算定方法にも若干気になる点はあるのですが、11月には、第三者委員会が触れていなかった米国子会社の減損隠しの問題が新聞等で大きく取り上げられています。

 東芝で起きた粉飾事件は、公認会計士である私たちに、胸に突き刺さる複雑な思いを惹起させるものでした。

 もう一昔前に近い2006年、度重なる粉飾決算とそれを発見できない監査の問題が深刻化したことがあります。その時は、公認会計士・監査審査会から、当時の四大監査法人(新日本、中央青山、トーマツ、あずさ)すべてについて業務改善の指示をするよう金融庁に対して勧告がなされました。

 そのうちのひとつ、中央青山監査法人は、カネボウに対する監査の不備などを指摘され、2か月間の業務停止処分を受けましたが、さらに日興コーディアル、三洋電機などへの監査でも問題が噴出、ついに、翌2007年、解体を余儀なくされたのです。

 中央青山監査法人の解体は監査業界に超弩級の衝撃をもたらしました。他の監査法人、公認会計士も、厳しい覚悟をもって監査業務に臨むこととなったのです。

 しかし、その後も粉飾事件は後を絶ちませんでした。野村證券と日本IBMの共同設立会社から始まったIT企業のニイウスコーが架空循環取引(2008年)、トヨタ傘下のフタバ産業が架空資産計上(2009年)と続き、ついに、2011年、オリンパスの損失隠蔽取引、大王製紙の不正な関連当事者間取引と、上場名門企業による粉飾が相次いだのです。

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