戦略にこそ「戦略」が必要だ

危機の淵で投資を続けたアメックスの英断 ボストン コンサルティング グループ M・リーブス氏、K・ハーネス氏、J・シンハ氏

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

 調査した企業の約半分は、自社の事業環境に合わない戦略アプローチを採用している。間違いを減らすために、市場の「予測可能性」「改変可能性」「苛酷さ」の観点から類型化した5つの戦略アプローチ(※)の中から、自社に即したものを選び取る方法を解説する。今回は、企業を取り巻く環境が極めて「過酷」な状況に陥った場合に適した「リニューアル型」の戦略アプローチと、この戦略で見事にリーマンショックを乗り越えたアメリカン・エキスプレスについて見ていく。

(※)5つの戦略アプローチについては『企業の半数が間違える「戦略の選び方」』を参照

リニューアル型戦略アプローチで窮地を脱したアメックス

 2008年に金融危機が世界の市場を襲ったとき、アメリカン・エキスプレスはかつてない困難な状況に陥った。アメックスは9500億ドルの年間取扱高(2013年度)を誇る世界最大のクレジットカード会社だが、金融破綻が相次いだ当時、カード利用者の焦げ付きが急増し、消費者支出は急激に落ち込み、資金調達市場は干上がった。それ以前にも景気後退の局面はあったが、アメックスの顧客のなかでも裕福な層は消費を続けていた――ところが2008年はそうはいかなかった。

 もはや一刻の猶予も許されなかった。CEOのケン・シュノールトはすぐさま大幅なコスト削減とリストラを断行して、組織のフォーカスを絞り、従業員に対して危機意識を強調した。彼はこう述べている。「まずコストの問題に取り組む必要がありました。環境は激変し、金融危機前のやり方はまったく通用しなくなったのです。時間は限られていましたが、そんななかでも短期的視点と長期的視点の両面から、慎重に判断をする必要がありました」

 シュノールトは全従業員のおよそ10パーセントの削減に踏み切り、経営幹部の報酬を一時的にカットすることで人件費を抑制した。マーケティング費用と外部専門サービスに対する支払いも切り詰めたが、カスタマーサービス関連の予算は維持した。その後、新たな資金供給源を求めてアメックスは預金業務に参入した。「わずか数カ月のあいだに80億ドルを集めました」とシュノールトは振り返る。

 組織面ではシュノールトは、役割の明確化と、明快な指標を掲げた厳格な計画を重視した。「組織全体にわたって、従業員1人ひとりの説明責任を明確にしました」。重苦しい状況ではあったが、彼は将来に対する楽観的な見方を表明することを忘れなかった。「160年以上の歴史のある会社ですから、過去にも危機に直面した経験はあります」と彼は言う。「私たちは、長期的な見通しについては自信を持ち続けることが重要だと考え、こんな合言葉を拠り所にしていました。『資金の流動性を保ちながら収益性を上げる。それから、成長に向けて選択的に投資する』」

関連情報

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。