戦略にこそ「戦略」が必要だ

企業の半数が間違える、戦略の選び方 ボストン コンサルティング グループ M・リーブス氏、K・ハーネス氏、J・シンハ氏

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 このような機会に際しては、一社だけの力で業界全体を形成することはできないため、他社との協業が必須となる。また、リスクを共有し、組織能力を補完し、競合企業が関連企業を結集する前に迅速に新市場を立ち上げるためにも、他社と組む必要がある。シェーピング型アプローチをとる企業は、業界が発生期にあること、さらに、参画する複数のステークホルダーに影響力を及ぼさなければならないが完全にはコントロールできないことから、予測可能性が非常に低い状態で事業を営む。

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シェーピング型戦略アプローチ

 このアプローチでは、適切な時期に他のステークホルダーを巻き込み、将来のビジョンを共有する。そのうえで協業をうまく編成・調整するためのプラットフォームをつくる。そして、そのプラットフォームと、ステークホルダーから成るエコシステムを、柔軟性と多様性を維持しつつ拡大して進化させる。シェーピング型戦略は、クラシカル型戦略、アダプティブ型戦略、ビジョナリー型戦略とは著しく異なり、個々の企業よりもエコシステムが重要であり、競争より協業によるところが大きい。

 デンマークに本社を置くグローバル製薬企業、ノボノルディスクは1990年代より、中国の糖尿病治療の市場で勝利をおさめるためにシェーピング型戦略を用いた。同社が参入したのは、中国で糖尿病の問題が広く認識されるよりかなり前で、市場がどのように進展していくかを予測することはできなかった。しかし同社は、患者、規制機関、医師と協業することでゲームのルールに影響を及ぼすことができた。現在、同社は中国においてインシュリン製剤で60パーセントのシェアを有し、糖尿病治療市場で争う者のないリーダー企業となっている。

リニューアル型

 リニューアル型戦略アプローチは、苛酷な事業環境下で企業が活力や競争力を取り戻すことを狙いとする。このような困難な状況は、長期にわたる企業の戦略アプローチと環境のミスマッチや、深刻な外的・内的ショックにより引き起こされる。

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リニューアル型戦略アプローチ

 外的環境が非常に困難で、自社の現在のやり方では存続できない場合、断固として方向を転じることが、生き残るだけでなく次の成長のチャンスを確保するための唯一の方法である。企業はまず、できるだけ早く環境の悪化に気づき反応しなければならない。次に、生存能力を回復させるために果敢に行動する必要がある。事業のフォーカスの再定義や、コスト削減、資本の保護により効率化しつつ、さらなるリニューアルに取り組むための資金やリソースを捻出する。最後に、再び成長し成功するために、他の4つの戦略アプローチのいずれか1つへ方向転換しなければならない。

 リニューアル型アプローチは、他の4つのアプローチとは著しく異なる。たいていは防御から始まり、2つのはっきり異なるフェーズを経て、別の戦略アプローチをとる準備段階に至る。環境に取り残される企業が増えているため、リニューアル型はますます多く用いられるようになっている。

 アメリカン・エキスプレスの金融危機への対応は、リニューアル型アプローチの好例である。2008年に起きた信用危機により、同社はデフォルト率の上昇、消費者の需要減退、資本市場へのアクセスの制約、というトリプルパンチに見舞われた。同社は生き残るために従業員を約10パーセント削減し、非中核的活動から撤退し、投資を絞り込んだ。そして2009年までにコストを約20億ドル節減したうえで、成長とイノベーションへ方向転換した。新たなパートナーと提携し、ロイヤルティ・プログラムに投資し、預金事業に参入し、デジタルテクノロジーに注力した。2014年時点で同社の株価は景気後退期の最安値の約9倍に上昇している。

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