戦略にこそ「戦略」が必要だ

中国で「千載一遇の好機」つかんだノボノルディスク ボストン コンサルティング グループ M・リーブス氏、K・ハーネス氏、J・シンハ氏

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

 ソレンセンは医師や規制当局との提携がカギだったと振り返る。「私たちが中国で最初に行い、今でも世界中で継続しているのは、政府機関との関係構築です。彼らにとって克服すべき課題である糖尿病について説明し、公衆衛生に関わる人々を教育するのです。これまでに私たちが中国で糖尿病についての教育をした医師は、おそらく5万~6万人になります。つまり中国では、啓蒙・教育こそが当社のマーケティング活動だったのです」

 ノボノルディスクはこれに加え、草の根の理解を深めようと患者にも働きかけた。革新的な支援活動を推進する団体「ノボケア・クラブ」は90万人以上のメンバーを擁し、同社の役割を再定義する象徴的な活動母体となっている。いまやノボノルディスクは、単にインシュリンを供給するだけでなく、治療のパートナーとなり、食生活とライフスタイルの支援や投薬計画の管理をサポートする仕組みを提供している。

 さらに、ノボノルディスクは政策当事者とのパイプを確保するため、地域のコミュニティにも投資した。1995年に中国国内に同社として最初の生産拠点を立ち上げ、2002年には多国籍製薬企業としては初めて中国に研究開発センターを開設した。ソレンセンによると、こうした投資が功を奏し、ノボノルディスクは政府関係機関および中国糖尿病学会との緊密な連携を図りながら、全国的な診療ガイドラインの策定プロセスに参画する機会を得られたという。

 こうした取り組みを重ねた結果、ノボノルディスクは関係者の関心を高め、糖尿病治療の規準の開発に参画し、業界トップの座を確立した。2010年には、中国の糖尿病治療市場における同社のシェアは業界第2位の競合企業の2倍となった――しかもそれは、2025年までに患者数が倍増すると予測される市場である。

 ソレンセンはこのようなシェーピング型アプローチが、他の新興市場において戦略を展開する際の青写真になっていると説明する。「私たちが採用している戦略は、ほかの新興国においてもまったく同じように適用できます......まず各国の保健省、糖尿病関連の医療団体、患者団体との関係構築から始め、次いで医師に対する糖尿病教育を行います。こうした取り組みの結果、医師は糖尿病患者の診断ができるようになり、適切な治療ができるようになります。私たちは医師に治療法を教え、やがて彼らは当社の製品を購入することになります。とてもシンプルなモデルです」

パートナーと協業し、市場を創造する

 ノボノルディスクの例に見るような、産業を新たに形づくったり再形成したりする千載一遇の好機は、どうすれば得られるだろうか。その好機が訪れるのは、産業の発展の初期段階でいまだ業界のルールが確立されておらず、その産業が大きく魅力的なものに成長し、かつ、自社に有利な方向に進展する可能性がある場合だ。

 このような機会には、他のプレーヤーと協業する余地があると同時に、実際のところ、協業が求められてもいる。なぜなら、そのような市場を単独で形成することはできず――パートナーとリスクを分担し、組織能力や資源を補完しあって、素早く市場を立ち上げる必要があるからだ。

関連情報

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。