戦略にこそ「戦略」が必要だ

中国で「千載一遇の好機」つかんだノボノルディスク ボストン コンサルティング グループ M・リーブス氏、K・ハーネス氏、J・シンハ氏

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 調査した企業の約半分は、自社の事業環境に合わない戦略アプローチを採用している。間違いを減らすために、市場の「予測可能性」「改変可能性」「苛酷さ」の観点から類型化した5つの戦略アプローチ(※)の中から、自社に即したものを選び取る方法を解説する。今回は、将来は不透明だが、市場をつくり変えることが可能な事業環境に適した「シェーピング型」の戦略アプローチと、このアプローチで千載一遇のチャンスをものにした製薬大手のノボノルディスクについて見ていく。

(※)5つの戦略アプローチについては『企業の半数が間違える「戦略の選び方」』を参照

シェーピング型戦略アプローチで中国に糖尿病治療薬市場を創出

 1923年、アウグスト・クローグはデンマークでノボノルディスクを共同設立した。そのとき彼には、やがて中国でインシュリン事業が巨大な成長産業となり、自社がその発展に大きく貢献するとは想像すらできなかっただろう。現在、同社は市場の約60パーセントのシェアを有している。

 ノボノルディスクが中国でインシュリン事業に乗り出したのは1990年代のことだった。それは迫り来る糖尿病の脅威が広く知られるよりも、また糖尿病治療の市場が大きく発展するよりもかなり前のことである。CEOのラース・ソレンセンは、早期参入が何よりも重要だと語る。「私たちはとても早い段階で中国に進出しました。[中国において]最初に全額出資の子会社を設立した国際的製薬企業の1つでした」

 ノボノルディスクが中国に進出したとき、同国では糖尿病に対する意識は低かった。治療法は確立されておらず、同社には専門知識を持つ医師とのリレーションもなかった。当時、糖尿病患者は中国の人口の2.5パーセント程度と考えられていたが、実際にはそれよりずっと多かった。現在では、およそ10人に1人の中国人が慢性的症状に苦しんでいる――実に9900万人もの患者が存在することがわかっている。

 ソレンセンによると、ノボノルディスクはまず現地の製薬会社との提携を試みたが、いずれの企業も資金と技術力に欠けていた。そこで医師、患者、規制当局といったステークホルダーとの協力体制の構築に乗り出し、中国の人々の糖尿病に対する認知を高め、その治療法における先駆者となることを目指した。

 ノボノルディスクは、潜在顧客であり伝道者でもある医学界に対して、糖尿病の脅威と有望な治療法について啓蒙する医師の教育に多額の投資を行った。ソレンセンは中国衛生部および世界糖尿病財団とのパートナーシップを築いた。それからノボノルディスクは「チェンジング・ダイアビーティース(糖尿病を変えよう)・バス」というプログラムを立ち上げ、バスで地方の農村部を巡回し、遠隔地の医師に働きかけた。同社はこれまでに20万回以上にわたり、検査や治療、患者教育の向上を目的とした研修会や学会を支援している。

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