戦略にこそ「戦略」が必要だ

電子商取引の「未来」をつくり出したUPS ボストン コンサルティング グループ M・リーブス氏、K・ハーネス氏、J・シンハ氏

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 調査した企業の約半分は、自社の事業環境に合わない戦略アプローチを採用している。間違いを減らすために、市場の「予測可能性」「改変可能性」「苛酷さ」の観点から類型化した5つの戦略アプローチ(※)の中から、自社に即したものを選び取る方法を解説する。今回は、市場をつくり変えることが可能な事業環境に適した「ビジョナリー型」の戦略アプローチと、その成功例である物流大手のUPSについて見ていく。

(※)5つの戦略アプローチについては『企業の半数が間違える「戦略の選び方」』を参照

ビジョナリー型の戦略アプローチ

 ある種の環境においては、1つの企業の力によって業界を創造し、あるいは既存の業界を創り直すことが可能だ。このような強い力をもった企業は、ある程度の予測精度をもって未来像を描くことができる。そうした状況では、ビジョナリー型戦略アプローチが功を奏する。

 ビジョナリー型企業は独力で、新たな市場を切り拓くか、既存の市場を破壊できなければならない。コンピュータ科学の先駆者として知られるアラン・ケイは、ビジョナリー戦略の特質を端的に表現している。「未来を予測する最良の手段は、それを発明することだ」。未来を自ら創ることができれば、コピー機の「ゼロックス」や電気掃除機の「フーバー」のように、ブランド名がそのまま長年にわたって製品カテゴリーの名称になる可能性さえある。

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ビジョナリー型の戦略アプローチ

 ビジョナリー型アプローチには3つのステップがある。まず、早い段階でメガトレンドに乗ったり、新技術を応用したり、あるいは顧客の不満や潜在的なニーズと向き合うことで事業機会を「構想」する。次にそのビジョンを実現する企業や商品を誰よりも早く「構築」する。最後に、予期せぬ障害の克服には柔軟な手段で取り組みつつ、定めた目標を「貫徹」する。絵画に喩えるなら、シュールレアリズムの画家が目の前に存在しない対象を頭のなかで想像し、不屈の精神でそれをキャンバスの上に再現する作業だ。

 肝心なのはタイミングである。一番乗りすることで規模の優位性を手に入れ、競合企業を制することができる。さらに自ら業界標準をつくり、顧客の嗜好に影響を与え、コスト面でも優位に立ち、自社にとって有利な方向へと市場を導くことができる。

 ビジョナリー型はスタートアップ企業と関連づけられることが多いが、確固たる地位を築いた大企業であっても、このアプローチを理解する必要性がますます高まっている。大企業が、異業種の小規模企業から市場を破壊する攻撃を受けるケースが増えている。そうした攻撃に対抗し、より望ましくは先手を打つため、少なくともビジョナリー型の競争相手の考え方を知っておく必要がある。

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