戦略にこそ「戦略」が必要だ

リアルタイムの「市場実験」を繰り返すザラ ボストン コンサルティング グループ M・リーブス氏、K・ハーネス氏、J・シンハ氏

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

スピードと学習がなぜ重要なのか ―― ザラ(ZARA)

 予測が非常に難しい業界にあって環境適応力を研ぎ澄ませている企業の典型例として、スペインに本拠を置くザラがある。ファッション業界では、新シーズンの直前になっても次の流行色を予測するのは難しい。それどころか、1つのシーズンのなかでも消費者の好みは頻繁に移り変わる。ところがこの業界の歴史を振り返ると、多くのブランドが消費者の求めるものを予測しては失敗し、毎年在庫の半分を値引きする羽目に陥ってきた。

 ザラの持株会社であるインディテックスは値引きのコスト負担に我慢できなくなり、製造と販売の両面からアダプティブ型アプローチを採用することにした。

 1975年にザラを立ち上げて導入したのが、業界用語でいうところの「ファストファッション」だ。ザラは消費者の好みを予測するのではなく、彼らが実際に購入しているものに素早く反応する道を選んだのだ。

 ザラはこれを実現するために2つの方法をとった。1つはサプライチェーンの短縮だ。製造コストが少しばかり上昇するのは覚悟のうえで生産施設を消費地の近くに移し、その代わりに機敏さを手に入れた。たとえば東アジアにあった工場をメキシコやトルコ、北アフリカといった地域に移し、欧米市場向けの製造拠点とした。サプライチェーンの短縮はインディテックスを成功に導いた最大の要因である。これによって、デザインスタジオで誕生した新スタイルが目抜き通りの店舗に並ぶまでの期間は、わずか3週間に短縮された――業界平均よりも5カ月間も短い驚くべきスピードだ。

 もう1つ、ザラは各スタイルについて少量生産の方針を貫いている。それはいわばリアルタイムの市場実験であり、棚から飛ぶように売れていく人気のスタイルだけを選んで生産を拡大できる。ザラは競合ブランドよりも多くのアイテムを実験することができ、それによって顧客を絶えずひきつけ、もっと欲しいと感じさせるのだ。

 実際、ザラがシーズンの半年前に製造を開始している商品は全体のわずか15~25パーセントにすぎない。シーズンの幕開けまでに計画が確定しているのは、業界平均の80パーセントに対して50~60パーセントだ。つまりザラの商品の半数近くはそのシーズン中にデザインされ、製造されていることになる。たとえばハーレムパンツとレザーが突然注目を集めるようになったら、ザラはすぐさま反応して新しい商品をデザインし、流行がピークに達して失速する前にそれらを店頭に並べる。

<FONTBOLD />ザラのアダプティブ型アプローチは高い利益率を生み出している</FONTBOLD></p><p>出所:Capital IQ、各社アニュアルレポート、BCGデータベースおよび推定 注:EBITは利払い前・税引前利益

ザラのアダプティブ型アプローチは高い利益率を生み出している

出所:Capital IQ、各社アニュアルレポート、BCGデータベースおよび推定 注:EBITは利払い前・税引前利益

 効果は絶大だ。2010年にザラが値引きをしたのは在庫のわずか15~20パーセントにすぎず、業界平均の50パーセントを大きく下回っている。また、製造拠点のほとんどをアジアに置いている競合企業に比べると、直接的な製造コストは高いものの、利益率は業界平均の2倍に達し、きわめて高い在庫回転率を達成して資本利益率(ROC)を向上させている。

関連情報

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。