戦略にこそ「戦略」が必要だ

リアルタイムの「市場実験」を繰り返すザラ ボストン コンサルティング グループ M・リーブス氏、K・ハーネス氏、J・シンハ氏

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 調査した企業の約半分は、自社の事業環境に合わない戦略アプローチを採用している。間違いを減らすために、市場の「予測可能性」「改変可能性」「苛酷さ」の観点から類型化した5つの戦略アプローチ(※)の中から、自社に即したものを選び取る方法を解説する。今回は、市場の将来予測が難しく、市場をつくり変えることも難しい事業環境に適した「アダプティブ型」の戦略アプローチと、その典型例であるアパレル大手のザラ(ZARA)について見ていく。

(※)5つの戦略アプローチについては『企業の半数が間違える「戦略の選び方」』を参照

アダプティブ型の戦略アプローチ

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アダプティブ型の戦略アプローチ

 将来の予測が難しく、つくり変えるのが困難な事業環境では、優位性は長続きしない。このような環境で成果をあげるには、迅速に変化に適応できるよう準備しておく必要がある。チャンドラが変化の激しいITサービスの分野で実践したように、アダプティブ型アプローチを採用する企業は新たな機会や状況に対して素早く適応し続けることにより、成長および優位性の原動力を得ている。

 アダプティブ型の企業は絶えず新しい選択肢を生み出してビジネスのやり方を「多様化」させ、そのなかからもっとも有望なものを「選択」し、そのうえでそれを「拡大展開」して利益を刈り取り、再び同じサイクルを繰り返す。

 絵画にたとえるなら、アダプティブ型は、光と影が刻々と変化する場所で風景を描くようなものだ。描く対象に目を凝らして素早く筆をさばき、わずかな瞬間をものにするまで何度も絵の具を塗り重ねていく――そしてまた次の風景を捉える作業に移行する。

 事業戦略は、「分析、予測、トップダウン型の指令」という流れによってではなく、「多様化、選択、拡大」というサイクルから生まれる。アダプティブ型の企業はこのサイクルを競合企業よりも迅速かつ効果的に回すことで他社を引き離す。クラシカル型の企業が持続可能な競争優位を追求するのに対して、アダプティブ型の企業は一時的な優位性を鎖のようにつないでいく。ニューズ・コーポレーションの会長ルパート・マードックはこう指摘する。「世界はめまぐるしく変化している。これからは大きいものが小さいものを打ち負かすのではなく、速いものが遅いものを打ち負かす時代になるだろう」

 アダプティブ型アプローチはクラシカル型とは根本的に異なる。1つの計画を中心に据えるのではなく、また1つの「戦略」を拠り所とするわけでもない。重視するのは、分析や計画立案ではなく、実験だ。優位性は一時的であり、最終目標ではなく手段にフォーカスする。これから具体的に検証していくが、まずはアダプティブ型戦略の実例を見てみよう。

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