ビジネス書の目利きが選ぶ今月の3冊

「アメフト問題」の本質を読み解くビジネス書3冊 橋本忠明・「TOP POINT」編集長

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 フェアであることを最も重視するスポーツの世界において、その存在を根底から揺るがすような事件が続いている。とりわけその危機的な状況への応対が、アメリカンフットボール問題のケースでは、決して褒められるような出来ではない、ということも衆目の一致するところだろう。危機管理・危機対応という観点から、アメフト問題を読み解くヒントを与えてくれそうなビジネス良書を紹介したい。

■「予測できた危機をなぜ防げなかったのか?」

 「危機は予測可能である」――。本書(マックス・H・ベイザーマン、マイケル・D・ワトキンス著/東洋経済新報社)では多くの場合、危機は予測可能であるという。世界を震撼させた9.11同時多発テロをはじめとした大事件、大事故も予測できるという。だが現実には、大事件や大事故は発生している。本書では、予測できた危機を防ぐことができない各種の要因を明らかにする。

 十分に情報があるのに、対策を取らないーー。同時多発テロでは、このテロが発生する前に、アメリカの当局はそのリスクを十二分に理解していた。1995年には太平洋上でアメリカの民間航空機11機を同時にハイジャックする計画や、軽飛行機に爆薬を満載してCIA(中央情報局)本部に突入させる計画があったことを米国当局はつかんでいた。

 そうした事実を踏まえて、GAO(米国会計検査院)は報告書で、「FAA(連邦航空局)は搭乗前の乗客検査の実施基準を設けるべきだ」といった警告を発していた。にもかかわらず、FAAも航空会社も航空警備の改善のために、ほとんど何もしていなかった。

 本書は、その要因を3つ挙げる。「認知バイアス」「組織」「政治」の3つだ。例えば「認知バイアス」とは、「我々には楽観幻想が備わっており、問題があってもそれほどひどくはない、という判断を下す傾向がある」、「我々は自己中心的に解釈する傾向がある。危機についても自分に都合よく考える」「我々は将来を過度に軽視する。災害が起こるのははるか先だと思い、今その対策をしようとしない」といったものだ。

 こうした人間の認知バイアスに加え、政治にも問題がある。本書がいう政治要因とは、特殊利益団体のこと。特殊利益団体とは、彼らの行動が社会全体にどんな影響をもたらすかを考えずに、自己の集団の利得を求めようとする団体のことである。

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