ICTで築く明日の社会

人工知能に負けない子ども、どう教育するか 東京大学 大学院情報学環 教授 山内祐平氏

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 「1人で」というのは必ずしも独学でやるということではなくて、コミュニティーで学ぶとか、大学に戻って学ぶという方法も含むが、自分で自分の人生を設計して、キャリアの中で「この知識が必要だから主体的に学んでいく」という姿勢と学び方を知っていることが大事だ。それが身に付いていないと、社会人になって学び続けることはできないと思う。

――「学び方を学ぶ」とは、具体的にどういうことなのか。

 たとえば新聞記者が取材して新しい情報を得る行為は学習といえるが、それは人のネットワークがあってこそ学べている。人のネットワークをどう構成し、維持するかというスキルは「学び方を学ぶ」ことの一部になっている。どこに学習資源があり、どこに学習のきっかけが眠っていて、自分がどういう人間なのか、そして、どういうきっかけから、どんな学習をしていくのが自分にとって良いのか、自覚的であって実行できることが大事になってくる。

 社会人の場合でいうと、自分が抱えている課題を解決することが学習の出発点だと思う。しかし、それだけだと局所最適化してしまう可能性がある。幅広い視点を持つことが大事で、先に述べた「専門性を2つ持ったほうがいい」という話とも関連する。

 今の仕事に直接関係しなくても、隣接する領域が見えているか見えていないのかは非常に大きな意味を持つ。仕事に必要な知識が変わり始めたとき、全然違うところに飛んでしまうのではなくて、だいたい隣の専門領域に移っていく。だから、自分が今やっている仕事でつきあいのある隣の領域の人たちが今何を学んでいるのか、よくモニターしておくと、ひょっとしたら自分の仕事につながるものがあるかもしれない。その方向に自分の知識を少し伸ばしていくと、専門性が1つめから2つめへと越境していく。そういう意識を持って情報を収集したり学習したりすることが大事だと思うし、学び方を学ぶことにもつながる。

MITが「MOOC+対面講義」で修士号を出す

――ところで、山内教授が研究している学習テクノロジーについて、今、最も注目しているのは何か。

 学習テクノロジーはあくまでもツールなので、現実の教育制度にどれだけ活かされているかが重要だ。その点において、MOOCを使った米マサチューセッツ工科大学(MIT)の新しい修士課程に注目している。

 これまでMITはMOOCを生涯学習のための教材と位置づけていて、MOOCとMITの学位は無関係というスタンスだった。しかし、この10月に発表したサプライチェーン・マネジメントの新しい修士課程は、前半が無料のMOOC、後半がキャンパスでの講義という形で、修了すれば修士号を与えるパイロットプログラムとなっている(2016年2月開講)。MOOCを正式な修士課程に組み込んだところがある種のイノベーションだ。

 今後この試みが成功すれば、多くの教育サービスは対面とオンラインのハイブリッドサービスに展開していく可能性がある。きっと全世界の大学が「うちはどうしようか」と大騒ぎになると思う。既存の大学や小中高等学校の教育がテクノロジーによって本当に変わり始めたら、いろいろなものが一斉に動くのではないか。そこがこの1、2年の注目点だ。

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