ICTで築く明日の社会

人工知能に負けない子ども、どう教育するか 東京大学 大学院情報学環 教授 山内祐平氏

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 ただ、これまで何十年も続いてきた情報通信技術(ICT)による仕事の効率化の流れが、人工知能の商用化などによって閾値を超え、大きく変化し始めたとみるべきだろう。だとすれば、教育も大きく変わる時期に来ている。今の近代型の学校教育は、産業革命がきっかけだった。たくさんの工場労働者が必要になり、「マニュアルが読めて、決められたことをきちんと実行できる知識をもった人材」の育成のためにパブリックな学校教育制度ができた。日本だと、100年ちょっと前の話だ。しかし、今は「変化すること」を前提とした社会になった。教育にも、産業革命のときに次ぐような変化がそろそろ訪れるのではないか。

――変化することが当たり前の社会になったという点では、2011年に米デューク大学の研究者であるキャシー・デビッドソン氏が「今年度、米国の小学校に入学した子どもたちの65%は、大学卒業時に『今は存在していない職業』に就くだろう」という予測を示して波紋を呼んだ。この予測を受けて当時の米国の大学生たちが、未知の職業に就くために何を学ぶべきかを改めて考え始め、どんな職業にも通用するコミュニケーション力や分析力といった「つぶしのきくスキル」を重視するようになっていた、との報道もあった。社会の変化を前提にするなら、やはりつぶしのきくスキルを重視していくべきなのだろうか。

 子どもたちが社会に出てしっかり働けるように、社会全体が2つの方向の教育に関心を示している。

 1つは質問の通りで、21世紀型スキルの中の「課題発見・課題解決力」や「批判的思考力」「コミュニケーション能力」など、どんな職業にも必要とされる高度な能力への関心が高い。これは先進諸国共通の課題となっていて、OECDの学習到達度調査PISAもこの考えと連携している。

 しかし、つぶしのきくスキルだけで変化する社会を渡っていけるかというと、そう簡単ではない。仕事をする上で、専門的な知識が不要になるわけではないからだ。

 むしろ、専門知識を持ったうえで、それを「ハイスピードでアップデート」していくことがより強く求められている。たとえば人工知能に関連する仕事に就いたとして、20年前の論理演算ベースの人工知能と今の統計的な機械学習ではまったく違う技術になっている。つまり、同じ仕事をしていても、専門性を常にアップデートしていかなければならないのだ。

 さらに、身に付ける専門性は1つではなく、できれば2つ持ち(1つの領域の専門家はたくさんいる)、それら専門性の間で何か新しいものをつくり出すことが求められている。

 まとめると、どんな職種でもコアのスキルになる「課題発見・課題解決力」や「コミュニケーション能力」などは当然必要として、最新状態にアップデートされている専門性をできれば2つ持つ、ということになる。

 昔と比べると、必要な能力がえらく上がってきていると思う。

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