ICTで築く明日の社会

激闘ラグビーの裏側に、知られざる「選手の福祉」 流通経済大学スポーツ健康科学部教授 医学博士 山田睦雄氏

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

 ラグビーでは、カメラを使い、多くの人の目を使って、選手の状態を注意深くケアしている。山田氏は、そうする理由を次のように語る。「脳振盪というと、意識を失った状態を思い浮かべるかもしれませんが、実はそうした脳振盪は全体の10%未満でしかありません。脳振盪のことをよく知っている専門家でないと、ほかの90%の脳振盪を見逃す可能性があります」。脳振盪を見逃すと、より深刻なダメージを受けたままプレーを継続する可能性もあり、集中力を失った選手が次のプレーで大ケガをするかもしれない。だからこそ、脳振盪には非常に気をつかっているのだ。

ゲーム中の脳振盪の判定も「より精度よく」

 脳振盪の診断方法は、「ヘッド・インジュリー・アセスメント(HIA)」という手法に基づいて、より精度よく行っている。脳振盪を起こすと、一時的にぼんやりしたり、ふらついたり、記憶力が悪くなったりする。それらを評価するためのHIAソフトウェアをタブレット端末に搭載し、試合で利用している。

<FONTBOLD />タブレット端末に搭載した「ヘッド・インジュリー・アセスメント(HIA)」のソフトウェア</FONTBOLD> スーパーラグビーでも、このソフトウェアが使われる

タブレット端末に搭載した「ヘッド・インジュリー・アセスメント(HIA)」のソフトウェア スーパーラグビーでも、このソフトウェアが使われる

 HIAのテストをいくつか紹介しよう。バランスのテストは、文字通り選手の平衡感覚を評価するものだ。選手に足を縦にそろえて立ってもらい(片方の足のかかとにもう片方のつま先が付く形)、目を閉じ静止姿勢を20秒間保ってもらう。その間に目を開けたり体が30度以上傾いたりするたびに「エラー」としてタブレットに入力していく。エラーが一定数を超えればバランスに問題があると判定する。

 記憶力のテストでは、「3、9、7、0、4」といった数字を選手に伝え、逆の順番に数字を答えてもらう。「4、0、7、9、3」と答えられればOKだ。

 ただし、平常時の身体能力や記憶力は選手によって少し異なる。「たまに、普段から一部の評価項目に引っかかる選手もいます。そういう場合でも正しく判定できるように、選手ごとの平常時の能力をタブレット端末にベースラインとして保存しています。テスト結果と平常時の能力を比べれば、脳振盪の疑いを適切に判断できます。スーパーラグビーに参戦するサンウルブズの選手も、沖縄の合宿でベースラインを測定しました」(山田氏)。

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。