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激闘ラグビーの裏側に、知られざる「選手の福祉」 流通経済大学スポーツ健康科学部教授 医学博士 山田睦雄氏

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最もハードなスポーツだからこそ、多くの目で「選手を見守る」

 上記のような対応は、ワールドラグビーが2011年から掲げている「プレイヤーウェルフェア(選手の福祉・健康)」という取り組みに基づいている。

 「プレイヤーウェルフェアとは、選手を守るということです。選手はお金や自分の将来のために、無理をしてがんばってしまいやすい。しかし、ケガを負ったままプレーをしても良いパフォーマンスは出せず、結局は選手のためになりません。チームやファンにとっても同じです。こうした状況に対して、医療の立場から選手を守り、良いラグビーのゲームを運営するための取り組みがプレイヤーウェルフェアです」(山田氏)。

 山田氏自身、ワールドラグビーの医務委員会でプレイヤーウェルフェアを推進してきたメンバーの1人だ。ワールドラグビーが中心となって、世界各国の、すべてのラグビー関係者に安全なプレーや救急救命の指導をしている。「ワールドラグビーには、ラグビーをどのスポーツよりもプレイヤーウェルフェアを尊重するスポーツにしたいという思いがあります。ですから、安全対策やピッチサイドの救命救急などは、ほかのスポーツよりも進んだ内容になっています」。

 たとえば「テレビジョン・マッチ・オフィシャル(TMO)」はその1つ。ワールドカップやスーパーラグビー、国内リーグの試合などでは、レフリーの判定をサポートするために録画映像を利用している。判定が難しい微妙なプレーをスロー再生して見極めるためだ。このTMOを選手の安全対策に応用している。

<FONTBOLD />ワールドカップの医務室でテレビジョン・マッチ・オフィシャル(TMO)の映像を見ているところ</FONTBOLD> エンジニア(写真中央)がホークアイシステムを操作し、ドクター(左)がその映像を見つめている。

ワールドカップの医務室でテレビジョン・マッチ・オフィシャル(TMO)の映像を見ているところ エンジニア(写真中央)がホークアイシステムを操作し、ドクター(左)がその映像を見つめている。

 「2015年ラグビーワールドカップでは、マッチドクター専用のカメラを何台も用意し(ホークアイシステム)、倒れた選手を探します。その映像をピッチサイドにいるマッチドクターや医務室にいる医療スタッフが見て、脳振盪の疑いがある選手を見逃さないようにしていました。横にエンジニアがいて、ビデオをすぐに巻き戻して再生することもできます。疑わしい選手を見つけたら、マッチドクターか医務室のドクターがレフリーにインカム(携帯通信機器)で連絡を入れます。レフリーは試合を中断させ、該当する選手を一時交代するように指示します」。このとき、試合会場のオーロラビジョンにTMOの映像を流してレフリーに確認してもらうこともあるため、観戦している人も何が起こっているのかわかるかもしれない。

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