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激闘ラグビーの裏側に、知られざる「選手の福祉」 流通経済大学スポーツ健康科学部教授 医学博士 山田睦雄氏

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 今、日本で最も注目されているスポーツといえば、昨年のワールドカップで快挙を成し遂げた「ラグビー」だろう。その勢いのまま、2月26日開幕の国際リーグ戦「スーパーラグビー」への期待も高まっている。今年は日本代表チームの「サンウルブズ」が参戦するのだ。そんな注目のラグビーを、少し異なる角度から観戦し、より楽しむための話を紹介したい。キーワードは「プレイヤーウェルフェア(選手の福祉・健康)」である。

かつてラグビーの試合でよく見た「魔法の水」はどこへいった?

 ラグビーは、最も激しく体をぶつけ合うスポーツの1つだ。その闘志あふれるタックルやスクラムはラグビーの醍醐味だが、それゆえ激しいタックルなどによって試合中に脳震盪(のうしんとう)を起こし、ピッチに倒れてしまう選手も出てくる。

<FONTBOLD />山田睦雄氏(やまだ むつお)</FONTBOLD></p><p>流通経済大学スポーツ健康科学部教授・医学博士。ラグビーの国際統括組織「ワールドラグビー」の医務委員会に参画

山田睦雄氏(やまだ むつお)

流通経済大学スポーツ健康科学部教授・医学博士。ラグビーの国際統括組織「ワールドラグビー」の医務委員会に参画

 「昔だったら、脳振盪で倒れた選手の頭に大きなやかんで『魔法の水』をかけ、意識が戻れば試合に復帰させていました...」。こう話すのは、ラグビーの国際統括組織「ワールドラグビー」の医務委員会に参画している山田睦雄氏(流通経済大学スポーツ健康科学部教授・医学博士)だ。ご存知の通り、「魔法の水」といっても普通の水だが、意識がもうろうとした選手に水をかけるだけで不思議と元気になった。そして、立ち上がった選手に観客が惜しみない称賛を送るシーンをよく見かけた。

 しかし、去年のラグビーワールドカップで、そういう場面は1度もなかった。ラグビーにはつきものだった「魔法の水」は、いったいどこに行ってしまったのだろうか。

 答えは単純明快だ。倒れた選手の頭に水をかけ、意識が戻ったら試合に戻すことは、実は「危険な行為」だったのである。それゆえ魔法の水は使われなくなった。

 山田氏は、「今は脳振盪を『脳の外傷』と考えています。深刻な脳の外傷が隠れているかもしれません。マッチドクター(試合中の負傷者を診る医師)は選手が脳振盪かそれ以上の頭部外傷があるかどうかを慎重にチェックするため、選手をピッチ外の静かな部屋に連れていき、10分間かけて脳振盪のチェックをします。意識がある状態でも、脳振盪かその疑いがあるというだけで選手は即座に退場となります。回復には個人差があり、脳振盪の症状がなくなるまで安静が必要です」と説明する。

 倒れた選手のメディカルチェックをしている間、代わりの選手が出て試合は何事もないかのように進んでいくが、見えないところではこうした処置が行われている。昔と今では、倒れた選手へのケアに隔世の感がある。

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