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医学研究につきまとう「データ数の壁」、iPhoneで崩す 慶應義塾大学医学部循環器内科 医学博士 木村雄弘氏

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国内初のアプリ「Heart & Brain」は脳梗塞の研究に

 2015年3月 にアップルがResearchKitを発表して以来、世界でこれを利用した医学研究用のiPhoneアプリが続々と登場している。すでに、自閉症、心臓血管疾患、ぜんそく、てんかん、糖尿病、乳がん、メラノーマ(悪性の皮膚がん)などの病気に対して、それぞれ専用の臨床研究用アプリが開発されている。

<FONTBOLD />Heart & Brainのトップ画面</FONTBOLD>

Heart & Brainのトップ画面

 ResearchKitを利用した国内初の臨床研究用iPhoneアプリは、木村氏が開発した「Heart & Brain」(2015年11月公開)である。不整脈と脳梗塞の早期発見を目的とした臨床研究の一環として利用するもので、まずはiPhoneアプリから収集したデータの有用性についてきちんと評価すると木村氏は語る。

 Heart & Brainの研究対象の心房細動は、全国で100万人以上の方が罹患するありふれた不整脈である。命に直接かかわる不整脈ではないが、合併する脳梗塞はしばしば致命的となる。一方、脳梗塞も、日本人にとって非常に身近な病気である。脳梗塞を含む脳血管疾患が日本人の死亡原因の上位であるというだけでなく、自覚症状の無い小さな脳梗塞(無症候性脳梗塞)を抱えている人も意外と多いのだ。

 Heart & Brainは、次の3つの側面からデータを収集し、脳梗塞との関連性を解析していくと木村氏は説明する。(1)心房細動、脳梗塞の危険因子の有無などを問う「質問票」、(2)iPhoneやApple Watchが自動的に蓄積している「ヘルスケアデータ」、(3)脳梗塞の検出に役立つ可能性のある簡単な「運動評価検査」の3つである。データ収集に要する時間は10~20分ほどだ。

 「質問票」は医師の問診の代わりと考えればよいだろう。一般的なアンケート形式で、脳梗塞の危険因子とされる年齢、高血圧、糖尿病、不整脈、喫煙、脂質異常などの状況を尋ねてくる。

 「ヘルスケアデータ」の収集は、iPhoneアプリらしい機能といえる。iPhoneユーザーならご存知のように、iPhoneが内蔵センサー(加速度センサーやジャイロスコープなど)を利用して、歩数、歩行とランニングの距離、階段を上った階数、消費エネルギー、倒れた回数などを推定して自動的に計測・蓄積している。腕時計型ウェアラブルデバイスのApple Watchを併用していれば、心拍センサーから心拍数データも計測している。

 Heart & Brainは、研究協力者の同意を得たうえでこれらのヘルスケアデータを「調査の日から数週間さかのぼって取得することで、経時的なヘルスデータを収集している」(木村氏)という。研究協力者の日常の運動量を客観的かつ容易に把握できるわけだ。

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