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医学研究につきまとう「データ数の壁」、iPhoneで崩す 慶應義塾大学医学部循環器内科 医学博士 木村雄弘氏

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 医学研究の分野において、「iPhoneを利用した臨床データ収集」という試みが世界で注目されている。世界で数億台使用されているiPhoneを通じた臨床研究には、膨大なデータを短期間で集め得る「データ収集力」が見込めるからだ。

 「データ量」は、医学研究に限らず、あらゆる分野の実証研究において最も重要なものの1つである。データが多ければ多いほど、研究で得られた結果の正確さが高まり、新たな発見の裏付けとなる。

 同時に、いかにして大量のデータを収集するかは、医学研究で難しいことの1つでもある。

<FONTBOLD />木村 雄弘氏(きむら たけひろ)</FONTBOLD></p><p>慶應義塾大学医学部循環器内科 医学博士

木村 雄弘氏(きむら たけひろ)

慶應義塾大学医学部循環器内科 医学博士

 一般的な臨床研究では、「研究協力者に研究の内容を詳しく説明して、同意を得たうえで臨床研究に参加していただきます。一連の手続きやデータ処理に、相当な労力が必要です」。こう話すのは、医学研究用iPhoneアプリ「Heart & Brain」を開発した、慶應義塾大学医学部循環器内科の木村雄弘特任助教である。手間もコストもかかる従来の研究方法では、収集できるデータの数に自ずと限界があることは容易に想像がつく。

 この「データ収集の壁」に突破口を開けようとするのがiPhoneを通じた医学研究用の公開フレームワークである「ResearchKit」(開発は米アップル)だ。ResearchKitの公式ホームページには、「数がすべてなのです。データの提供者が多ければ多いほど、サンプル数が増え、母集団を代表するデータの正確性が高まり、より説得力のある結果が得られます。大量のデータを収集し、共有できる研究プラットフォームは、医学研究にとって間違いなくプラスになるでしょう」という米国心臓協会エデュアルド・サンチェス博士の言葉が紹介されている。

 ResearchKitを利用することで、研究内容の説明、研究への同意、データ収集の機能を臨床研究アプリに容易に実装できるようになる。研究協力者は自分のiPhoneにアプリをダウンロードして起動するだけで、研究に参加できる。数千万人を対象とした全国レベルの臨床研究を従来の方法で行うことと比べれば、人手もコストも少なくてすむし、アプリが話題になりダウンロード数が増えれば膨大な臨床データを収集できる。

 Heart & Brainを開発した木村氏も、「アプリの反響と、健康への関心の高さに驚きました」と語る。その実績については後述するが、従来の臨床研究とは桁が違う数のデータを短期間で収集できている。

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