ICTで築く明日の社会

ネットとリアルで理想の高校めざす N高等学校校長 奥平博一氏

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――ICT(情報通信技術)が教育にもたらすインパクトをどうお考えですか。

 どこにいても最新の情報、優良な情報がすぐに手に入る。これがネットのすばらしさだ。東京の最先端の授業を北海道でも沖縄でも受けられる。地理的な格差がなくなる。N高等学校は沖縄県に本校を置くので、私も沖縄での仕事が増えているが、地方では塾に行くにも何時間もかける必要があり、ネットの必要性を実感している。高校設立の話を知った住民からは「公民館に大きなプロジェクターを置くから、そこで授業を流して」といった要望もある。

リアルより緊密な関係も

 授業以外でも影響は大きい。たとえば、生徒同士がけんかしたとする。私が若いころは「明日学校に来たら、どう話そうか」と考えていた。家に帰れば通信手段はないから。ところがいまは、夜の間にネット上でやり合うことで、事態が悪化してしまうことが多い。他の友達も参加したりしてね。もはや学校のリアルの現場だけで何とかできる時代ではない。

 学校では携帯電話を使っちゃいけないとか、カギつきのロッカーに入れるとか、決まりを作っても、24時間管理することは無理。むしろ、そういう時代だということを認識して、大人が積極的にその世界に入っていくことも1つの解決法ではないか。

――積極的に入っていくとは具体的には。

 私はかつて別の通信制高校で指導をしていたが、夜も昼も生徒からショートメールが来る。前に全日制の高校に通っていたころに比べ、はるかに多く話しているという子もいる。こうした1対1の関係を作っていくことは非常に大事なことだと思う。

 不登校や、その延長線上にある引きこもりの人を含めると数十万人にのぼるといわれる。通信制高校はこうした人たちにリーチして再チャレンジの機会を与える役割を果たそうとしてきた。そうした現実を見ずに、「やはりリアルの学校のような密なコミュニケーションはムリでしょう」と批判する声には、ずっと違和感を持ち続けてきた。

 高校そのものが本来はもっと専門的な教育を行う機関のはず。しかし、高校進学率が97%に達し、かえって基礎的な教育に時間を割かざるを得なくなっている。その意味でも、N高等学校では原点に戻りたい。優良なコンテンツを提供し、生徒にはやりたいことを見つけてほしい。そこから働いてもいいし、専門学校や大学に進んでもらってもいい。ネットがすべてではないが、なにか救いの手となることを信じている。

キーワード:経営、経営層、管理職、技術、イノベーション、ICT、IoT、AI、ものづくり、製造

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