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実は農業は魅力的? 秋田県大潟村の奇跡 キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹/農学博士 山下一仁氏

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 コメの内外価格差が消滅したのは、水不足や円安によりカリフォルニア米の価格が高騰したことが大きいが、「この状況はまだ続きそう」と山下氏はみる。さらに、「日本の米価(2015年2月時点で約1万2000円)は減反によって守られた結果だ。減反は、コメの生産量を減少させることに対して補助金を出し、その結果として米価を高く維持するための政策である。減反をやめれば生産量が増えて価格は下がる。今の状況で計算すると、1俵(60キログラム)あたり7500円が需給均衡価格になるだろう」と指摘する。

 減反廃止となり、もし山下氏の計算どおり国内米価が7500円になるとしたら、何が起こるか。

 コメ農家にとって米価の下落は大問題だが、山下氏は次のような見通しを語る。「海外で日本のコメが高く売れることはわかっている。仮に商社が1俵7500円でコメを買い付け、海外で例えば1万2000円で売れば確実に儲かる。そうすると輸出が増えて国内流通量が減るから米価が次第に上昇し、輸出価格の水準に近づいていく。ただし、一時的に米価が下がるので、米価が上昇するまでの間だけ農家に対する支援策を検討する必要があるだろう」

 では、コメの輸出量はどの程度の規模になるのか。「今、コメの生産量は年間800万トンくらいだが、1993年に大冷害が起こってコメ不足が深刻化した翌年、一時的に減反を解除したら生産量は1200万トンまで増えた。コメ以外の作物に転作していた農家側の対応が十分でなかったにもかかわらず、である。現在でも同程度の生産能力はあると考えていて、800万トンを超えた部分は輸出に回せる」と山下氏は見積もる。妥当な輸出価格でコメの生産量が増えるならば、農家の所得も増える計算だ。

農業を大規模化すれば、十分な機械化/ICT投資が可能に

 このように日本の農業には成長余地が十分あるという。だが、大規模化して、もっと経営を効率化していく必要があるのは明らかである。山下氏は、「基本的に農業の大規模化を進めていかないと、農業自体が立ち行かなくなるし、関連する産業もしぼんでしまう。大規模化していけば、機械化やICT(情報通信技術)の活用といったコストダウンの仕組みにも投資でき、さらに効率化できるようになる。兼業農家の小さな規模ではとても無理」と話す。

 農業の生産性を高める取り組みについては、山下氏の著書『日本農業は世界に勝てる』でもICTを活用したスマート農業などについていろいろ紹介されているが、大きな可能性を秘めた研究開発の例として、山下氏は「無人運転トラクター」や「農業用ドローン(小型無人機)」を挙げる。

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