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実は農業は魅力的? 秋田県大潟村の奇跡 キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹/農学博士 山下一仁氏

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日本の人口減少問題は「世界の人口増加」で解決

 大潟村の例は、農業が魅力的であれば、社会的な課題の1つが自ずと解消され得ることを示している。山下氏はさらに、農業のグローバル化によって、さらなる成長の余地があると説く。

 「日本の農業だけを見ていると、人口減少に伴って胃袋の数(国内需要)が減るといったことばかり気になり、希望のない話になってしまう。しかし、人口減少を受け入れ、その前提に立って最も良い解を考えるなら、もう農産物を輸出するしかない。国内市場は縮小していくが、海外では人口が増え、所得も増えている。とても見込みのある市場である」

 日本の農産物の国際競争力について懐疑的な見方をする読者も多いだろうが、山下氏はコメを例に現状を語る。

 「品質面を見れば、日本の農産物は世界に冠たるものがある。コメもその1つだ。たとえば香港で売られている各国のコメの値段を比べてみれば、日本のコメの品質に対する評価の高さがわかる。カリフォルニア産コシヒカリが1キログラムあたり240円、中国産コシヒカリが150円で販売されていたとき、日本産コシヒカリは380円で販売されていた(※)」

(※)出所:(株)マルタ調べ

 同じコシヒカリでも、香港では日本産が中国産の2.5倍の値段で売れる。つまり、品質面での国際競争力は十分に示されているといえよう。

コメの内外価格差が消滅した!

 問題は価格競争力だが、これも改善されているという。「日本はウルグアイラウンドのミニマムアクセス(※)枠を通して海外からコメを輸入してきた。これまで主食用の輸入枠は基本的に100%消化してきたが、2014年にほとんどゼロになった。なぜかというと、コメの内外価格差が消滅したからだ」と山下氏は指摘する(下図参照)。

(※)多角的貿易交渉のウルグアイラウンドで、高関税による貿易の障壁を撤廃するためにつくられた「最低輸入機会」。高い関税をかけている特定の農産物などに対し、一定量(日本のコメについては国内消費量の8%)までは低関税または無税で輸入することが義務付けられた。現在、加工原料用・飼料用を含むコメのミニマムアクセス枠は約77万トン。うち10万トンが主食用の輸入枠として設定されている。国で約束したものを国家貿易企業である農林水産省が輸入することから、ミニマムアクセス枠については義務的な輸入として全量輸入しているが、そのうちの主食用枠についてはすべて輸入で満たされなくてもよいという運用をしている。

<FONTBOLD />コメの内外価格差は2014年に消滅した</FONTBOLD> カリフォルニア産と中国産のコメについては、ミニマムアクセス米のSBS(売買同時契約)方式による買入価格を比較。出所:農林水産省の資料をもとに山下氏が作成</p><p>

コメの内外価格差は2014年に消滅した カリフォルニア産と中国産のコメについては、ミニマムアクセス米のSBS(売買同時契約)方式による買入価格を比較。出所:農林水産省の資料をもとに山下氏が作成

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