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実は農業は魅力的? 秋田県大潟村の奇跡 キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹/農学博士 山下一仁氏

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大潟村の農業所得は1400万円超クラス

 日本全体で少子高齢化が進んでいる中、大潟村の人口動向は奇跡のようにも思える。山下氏はその背景を説明するために1枚のグラフを示した。コメ農家の規模別に生産費と米作所得を比べたものだ。

 山下氏が「大潟村を除く東北地方の農業はここ」と言って指差したのは、グラフの左の方にある作付面積1ヘクタール(ha)のあたり。都府県の平均的なコメ農家の規模に相当する。

 「この規模のコメ農家は兼業農家で、実のところ農業所得はトントンかマイナスになっている。たとえば1ヘクタールの田んぼで100万円くらいの収入があっても、そこから肥料や農薬、農業機械、燃料のコストを差し引いた所得はおこづかいにもならないほどだ。兼業農家は週末しか農業をやらないので、こういう収益計算が甘くなっている」

<FONTBOLD />コメの規模別生産費と所得</FONTBOLD></p><p>出所:農林水産省「平成24年度農業経営統計調査」

コメの規模別生産費と所得

出所:農林水産省「平成24年度農業経営統計調査」

 コメを生産する兼業農家の所得状況はこのように厳しい。山下氏は、会社員としての所得で人並みに暮らせるのだから、兼業農家を続けるよりも、農地を大規模な専業農家や農業法人に貸した方が儲かると話す。

 一方、大潟村のコメ農家は平均作付面積が約20ヘクタールの大規模農家なので、グラフの一番右、所得は1400万円超のクラスだ。コメ1俵(60kg)あたりの生産費が低く、収益性が高い。

 「この1400万円というのは1世帯(経営体)の所得であるが、実際に経営しているのはお父さんと子どもの2人だったりする。均等に分けても1人700万円になる。地方で、しかも農作業をする夏場だけでこれだけ稼げば大したものだ。こういう仕事には後継者がいるから農家は高齢化せず、人口も減らない」。大潟村が自治体消滅の危機と無縁なのは、大規模な農業で収益性が高いからだといえる。

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