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実は農業は魅力的? 秋田県大潟村の奇跡 キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹/農学博士 山下一仁氏

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 地方の市町村に魅力的な仕事、十分な雇用力がないから、人は仕事を求めて都市へ流出し、限界集落の問題や自治体消滅の危機が起こる。雇用状況が変わらぬ限り、この流れを止めることはできないだろう。だが逆に、魅力的な仕事があれば......人はその地にとどまり、いきいきと暮らす。このような社会課題に対し、『日本農業は世界に勝てる』の著者であるキヤノングローバル戦略研究所 研究主幹の山下一仁氏に、農業の視点から課題解決への取り組み方を聞いた。

秋田県で大潟村の農家だけ高齢化しない不思議

 「日本創成会議」の試算は、秋田県では大潟村を除きすべての自治体が消滅の危機にあると報告した。大潟村は八郎潟を埋め立てて造った農村である。・・・(大潟村の農家の)子供は東京の大学を卒業しても村に戻って家業を継ぐ。後継者がいるので、他地域のように農家は高齢化しない。

<FONTBOLD />山下一仁(やました かずひと)氏</p><p>キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹、経済産業研究所 上席研究員</FONTBOLD></p><p> 1955年岡山県生まれ。1977年東京大学法学部卒業、農林省(現農林水産省)入省。農林水産省ガット室長、(在ベルギー)EU日本政府代表部参事官、農林水産省地域振興課長、食糧庁総務課長、農村振興局次長などを歴任。1982年ミシガン大学行政学修士、同大学応用経済学修士。2002年OECD農業委員会副議長。2005年東京大学農学博士号取得。2008年農林水産省退官。専門は食料・農業政策、地域振興政策、農業と貿易交渉、食品の安全と貿易など。『日本農業は世界に勝てる』『農協解体』『日本の農業を破壊したのは誰か』など著書多数。</p><p>

山下一仁(やました かずひと)氏

キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹、経済産業研究所 上席研究員

 1955年岡山県生まれ。1977年東京大学法学部卒業、農林省(現農林水産省)入省。農林水産省ガット室長、(在ベルギー)EU日本政府代表部参事官、農林水産省地域振興課長、食糧庁総務課長、農村振興局次長などを歴任。1982年ミシガン大学行政学修士、同大学応用経済学修士。2002年OECD農業委員会副議長。2005年東京大学農学博士号取得。2008年農林水産省退官。専門は食料・農業政策、地域振興政策、農業と貿易交渉、食品の安全と貿易など。『日本農業は世界に勝てる』『農協解体』『日本の農業を破壊したのは誰か』など著書多数。

 これはキヤノングローバル戦略研究所の山下一仁氏が同社のウェブサイトに掲載している『地方創生に欠けている大きな視点』という論文の一節である。秋田県の自治体のほぼすべてが消滅の危機にあるというのも深刻な問題だが、なぜ大潟村にだけ後継者がいて自治体の消滅を免れると試算されているのか。もちろん論文には理由がきちんと記されているのだが、その点を改めて山下氏に尋ねると、「大潟村では大規模な農業をやっている。十分な収入があるからだ」と笑う。

 まずは次の「人口減少地図」を見てもらいたい。2040年における若年女性(20~39歳)の数がどれだけ減るかを推計した地図である。若年女性が少ないと出生率も下がるので、人口推計には重要な指標となっている。日本創成会議は2040年までに50%以上減る自治体を「消滅可能性都市」としている。

<FONTBOLD />2040年における若年女性(20~39歳)の数がどれだけ減るかを推計した人口減少地図</FONTBOLD>(日経電子版で2014年9月24日公開)

2040年における若年女性(20~39歳)の数がどれだけ減るかを推計した人口減少地図(日経電子版で2014年9月24日公開)

 地図を見れば一目瞭然だが、秋田県の全域が自治体消滅の可能性がある赤と紫(若年女性50~80%減)で染まっているのに、大潟村だけがオアシスであるかのようにグリーン(同10~20%増)に分類されている。しかも、大潟村の「若年女性人口15.2%増」というのは全国2位だ。

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