ICTで築く明日の社会

ICTは農業を救うか~成長への期待を担う技術~ 日本政策金融公庫 農林水産事業本部 嶋貫 伸二氏

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 例えば春先に最も労力を費やす田植えについて、作業内容を細かく入力して分析するうちに補植(注)作業に多くの時間を費やしていることが分かった。「補植を少なくするには田植えの精度を上げることが必要。代かきなど田植えの前の作業を丁寧に行うようにしたところ、田植えにかかる時間が3割、述べ300時間も削減できた」と効果が如実に現れた。

(注)補植:苗の移植作業で田植機が植えそこなった部分を人の手で植え直す作業

すべての圃場に設置された水管理のセンサー(フクハラファーム)

すべての圃場に設置された水管理のセンサー(フクハラファーム)

 この他、フクハラファームでは全従業員がスマートフォンを利用し、Facebookで作業の予定や状況、施設の空き状況、問題発生などを情報共有している。これにより人員、機械、施設の効率化が図られるようになった。

 さらに現在進行中なのがフクハラファームなどの農業生産法人が中心となり、大学や企業などと共同で進めるセンサーによる水管理の実験事業だ。全圃場に据え付けられたセンサーにより水温、水深が1時間ごとに計測され、事務所のサーバーに無線で送られる。コメの品質、収量を安定させる重要なノウハウである田の水管理を可視化することが目的だ。「まだ、すべてのデータの整理・集計は出ていないが、通信上の問題解決や導入コストの抑制が進めば、生産性向上に間違いなく役に立つ」と言い切る。

 福原さんは「ICTを導入したから上手くいくものではない。何のために必要なのかを経営者が考え、従業員に分かってもらわないと意味がない。規模を拡大しても絶対にコメの品質は落とさない、そのための情報共有と改善のツール」と強調する。強みであるチームワーク、現場での課題解決能力の向上にICTは磨きをかける。

ICT農業普及の課題

 2つの事例が教えるのは、自らの経営にどう活かしていくのか徹底的に追及し、自社の課題をしっかり踏まえたうえでICTから何を得るのか、ということである。

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