ICTで築く明日の社会

ICTは農業を救うか~成長への期待を担う技術~ 日本政策金融公庫 農林水産事業本部 嶋貫 伸二氏

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350の圃場ごとに作業を管理

 滋賀県彦根市の有限会社フクハラファーム(代表取締役:福原昭一さん、60歳)は全国屈指の大規模稲作経営である。165ヘクタールの圃場にコメの他、大豆、麦、キャベツ、ニンジンなどの野菜、ナシなどの果樹を栽培している。福原さんが専業農家になって20年あまりで16倍も面積を拡大、これに合わせ農業経験のない若者などの雇用を増やしてきた。

福原さんは「何のためにICTを使うかが大事」と語る

福原さんは「何のためにICTを使うかが大事」と語る

 「日本農業の基本である家族経営の良いところは、朝昼晩と顔を合わせるので意思疎通が容易で、その都度改善が図られること。従業員5人くらいを超えるとそれぞれに目が行き届きにくくなり、ミスやタイムロスが増えてくることが悩みだった」という。「大規模経営であっても家族のように情報共有が図れないか」と考えている時に、大手ICTベンダーの開発者と滋賀県農業技術センターから圃場管理システム共同開発の提案があった。

 「条件が違う350枚もの圃場ごとに作業計画をつくるには規格化が必要。各圃場で行った作業、結果、作物の収量などの情報を作業計画に落とし込み、適期の水管理や施肥のタイミングの判断を皆で共有していく。それが実現すれば長い経験がなくても誰もが同じように作業ができる」と感じ、共同開発に乗り出したのは7年前の2008年だ。

 稲作の作業を丁寧に細分化し、必要とされるデータを洗い出して、何とか使えそうなソフトができるまで2年半を費やした。作業者は1日の終わりに作業内容、使った資材の量、気付いたことなどを圃場ごとにパソコンに入力する。

 福原さんが最も強く感じている効果は従業員の意識改革だ。「当社では現場での気付きを情報共有し改善に結びつけるため社員全員でのミーティングを実施している。以前は経験の浅い従業員は議論に参加できなかったが、数値化で2年目の若者でも問題点が見えるようになり、ミーティングが活性化。改善策を各自が考え、現場での判断スピードが上がった」という。

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