ICTで築く明日の社会

ICTは農業を救うか~成長への期待を担う技術~ 日本政策金融公庫 農林水産事業本部 嶋貫 伸二氏

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 これまでの栽培は経験と勘が頼りで、病気が発生しても環境面での要因を特定できないことが多く、品質や収量が思うようにならなかったという。導入後2年間はデータの意味をつかむのに必死だったが、文献やネット、先進農家との情報交換によってコツをつかみ、環境制御に必要なCO2発生装置や超ドライミスト加湿装置などを導入したことで改善につながった。

トマトハウス内の環境測定装置で24時間データを計測(井出トマト農園)

トマトハウス内の環境測定装置で24時間データを計測(井出トマト農園)

 また、作業内容や収穫量を入力し蓄積する自社専用ソフトを開発し、環境・作業要因と収穫量の因果関係の把握を容易にした。

 通常のハウストマト生産は年2回作付けし、それぞれ収穫期間は3カ月程度(年6カ月程度)で、収穫期間の初期と終期で品質にバラつきが出やすい。しかし、井出トマト農園では収穫期間9カ月という長期栽培を行うことで、品質のバラつきを抑え、長期間にわたり安定した品質のトマト供給を実現している。

 この難しい技術が可能となったのは環境測定装置や環境制御装置の活用と生育調査に基づき、丁寧な栽培管理を行った結果、という。

 消費者に最高品質の商品を届けるために人手を惜しまない。ICTによる合理化で人が減るどころか、むしろ栽培管理の濃密化等のため従業員、パートの人数は父から承継した時より4倍に増えた。人件費が増えても、流通経路の変更、品質、収量の改善で売上が8年前と比べ同じ面積で2.2倍にも増え、利益は計上できている。

 事務所の壁の見えやすいところに、大きくプリントアウトした茎や葉の写真を貼り、作業上の注意点を書き込むなど従業員の管理能力のレベルアップを図る。「現時点では栽培管理、データの読み込み、処理に至る適正な判断をできる人材の育成途上だが、ICT活用で習熟期間は短縮できる」という。

 「すべてはお客様に喜んでいただくために。ICTはそのツール」と、井出さんは言葉に力を込める。

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