ICTで築く明日の社会

「不機嫌なイチゴ」をICTでおいしく GRA代表取締役CEO 岩佐大輝氏

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

――現在、取り組んでいる技術はどんなものでしょう。

 最適な環境を維持するのは、比較的簡単にできる。いま取り組んでいるのは作物の状態を観察して、その状況に合わせて環境を制御すること。これは難しい。因果の把握が複雑になるからだ。今まで忠嗣さんのようなベテラン農家が「このイチゴ、機嫌が悪いな」と言っていた、この不機嫌さをデータとして把握する。今までは葉っぱの厚さ、長さ、色から何となく判断していた。専門の研究者がいるほか、外部の企業ともジョイントベンチャーを立ち上げて研究を進めている。

100年分の知恵を1年で得る

 もう1つは形式知にした匠の技を、農家と共有する試みだ。今年の春、「GRAアグリプラットフォーム」という事業を立ち上げた。例えば100戸の農家が参加すると、各農家は自分のデータを提供するかわりに、99戸のデータを得られる。ほとんどの農作物は1年に1回しか収穫できず、PDCAを年に1回しか回すことができない。このプラットフォームなら約100年分の経験、知恵を1年で持つことができる。

 この取り組みが軌道にのれば、農家に意識改革をもたらすかもしれない。旧来の農家は知恵やノウハウを他の農家に教えることはほとんどなく、一子相伝、門外不出の世界だった。しかし、後継者が減り、海外との競争が間近に迫るなか、農家同士で争うのでなく、みんなで伸びていくように変わっていく必要があるのではないか。その実現のためにICTは大きな役割を果たせるだろう。

――GRAは「プロボノ」と呼ばれる専門知識を持った外部の人がボランティアで参加するなど、ユニークな経営形態をとっています。

 非常に個性的な人材が集まり、時には衝突もある。ただ、ぶつかり合いもない所からは、毒もクスリも生まれない。変化やイノベーションを起こすには、多少の弊害はあっても、ダイバーシティのある環境を作るべきだ。そうしないと同質化し、躍動感が薄れてしまう。気の合う仲間とだけ付き合いたがる人は多いが、違和感を覚える人と一緒に働くことで、新たな気づきを得られることはたくさんある。「不安定を楽しみましょう」と呼びかけたい。

キーワード:経営、経営層、管理職、技術、イノベーション、ICT、IoT、AI、ものづくり、製造

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。