ICTで築く明日の社会

「不機嫌なイチゴ」をICTでおいしく GRA代表取締役CEO 岩佐大輝氏

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――ICTを積極的に活用していますが、狙いは何だったのでしょう。

 イチゴは施設園芸作物では最も生産が難しいとされるが、忠嗣さんは1年目から素晴らしいイチゴを実らせた。僕は「若い人でも栽培できるよう、この匠の技をマニュアル化しましょう」と提案したが、忠嗣さんは「イチゴと会話できるくらいにならなければダメだ」と初めは認めなかった。365日、朝3時には畑に来てイチゴの様子を観察しろという。

匠の技の再現性を限りなく高める

イチゴを収穫する岩佐氏(右)と橋元忠嗣氏

イチゴを収穫する岩佐氏(右)と橋元忠嗣氏

 僕は「匠の技を見て盗め」といった旧来の農業では、若者が集まる成長産業にはなりえないと感じていた。一般の産業ではPDCA(プラン・ドゥ・チェック・アクション)サイクルを回して改善していくが、今までの農業のように、感覚的なものに感覚を積み重ねても、どこが改善されたかわからない。PDCAをきちんと回すには、匠の技を「形式知」にしなければならず、そのためにはICTが必要だった。匠の技の再現性を限りなく高くして効率性を高めるために、ICTという道具を使おうというわけだ。

 もう1つの狙いは技能の伝承だ。農業者の平均年齢は66歳くらいという。自分たちが食べているご飯やおかずを作っているのが66歳の人たちだとすると、20年、30年先は一体どうなるのか。誰が農業を守っていくのか。彼らが生きているうちに知恵を形式知化し、資産にしていくしかない。今、弊社の栽培責任者は30歳代、いくつかある農場の責任者は20歳代が中心となっている。忠嗣さんには顧問役としてご指導いただいている。

――形式知化するとは、具体的にはどんな作業なのでしょうか。

 品質のよいイチゴができる最適な気温、湿度、肥料、二酸化炭素(CO2)濃度などの環境を、ICTを使って24時間、365日維持する。管理者がその場にいなくてもパソコンやiPadなどを使ってリアルタイムで把握できる。当社は今、インドでもイチゴを栽培しているが、そこの農場のデータもリアルタイムでみられる。データは毎週、会議で報告し、さらに精度を高めていく。

 ICTを使って形式知にすることで、勘と経験を排したサイエンス農業ができる。サイエンス農業ができると何がいいかというと、高品質の商品が安定して生産できること。これはブランド化には欠かせない。なぜならブランドには永続性、普遍性が求められるからだ。たまたま1個すばらしいものができてもブランドにはならない。伊勢丹新宿本店で販売した1個1000円の「ミガキイチゴ」も、こうした下地があって初めて実現した。

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